本の感想
ちばかおり・著/岩波書店/2017年刊感想 テレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」が、どういう経緯で作られたのか。その過程を追う内容。興味深いのは、ズイヨー映像社長だった高橋茂人の生い立ちから始まること。ひとりのプロデューサーの人生が、「ハイジ」と…
有栖川有栖・著/幻冬舎大阪中之島の銀星ホテル。その一室に5年間住み続けていた梨田は、カーテンのタッセルを使い、首をくくった状態で発見される。警察は自殺と判断するが、ホテルの従業員や常連客たちには、信じられない。大御所作家の影浦は、ホテルの常…
長江俊和/幻冬舎フリーライターの原田璃々子は、超常的、霊的な力を感知する特殊能力の持ち主である。彼女は、ある目的のため、おぞましき気配に誘われるかのように街を歩く。そして璃々子の大学時代の先輩、島野仁。民俗学者でもある島野は、東京に関する膨…
クライヴ・バーカー/中田耕治・松本秀子 訳/扶桑社第二次大戦後の死と混沌に覆われたワルシャワ。盗人は、絶対に負けないギャンブラーの噂を聞きつける。どうにかして彼と勝負したいと願った盗人は、ギャンブラーを探し出す…。時代は飛んで現代・イギリス。…
ウクメル村にかつて実在した巫女、その素性と村の歴史を調べていた考古学者。その過程で彼は、巫女の残した予言を発見。そこには、人狼による災いが起きると記されていた。なんとか被害が出る前に食い止めたいと願った学者は、探偵に手紙を書く。依頼を受け…
山田宏一・和田誠/草思社/20091978年の映画対談集「たかが映画じゃないか」から31年、今度はヒッチコックについて徹底的に語ろう、という趣旨の下に刊行された、ヒッチコック映画対談集。その基になっているのは、レーザーディスクでヒッチコック映画が発売…
米澤穂信/新潮社6編を収めた短編集。いずれも工夫があって飽きさせない。以下、結末に触れています。 厳密なミステリとしては「夜警」と「満願」の2作品がそれに相当するだろうか。妻に襲いかかる夫に発砲しながらも、その夫に逆襲されて殉職した若い巡査・…
松尾由美・著/新潮社/2007(読んだのは2009年刊行の新潮文庫版)〈あらすじ〉新しい部屋へ越してきた志織。奇怪なことに、エアコンのパイプを通すための穴から、声が聞こえてくる。自らをシラノと名乗るその声は、1年後のその部屋から呼びかけているという。時…
アイザック・アシモフの短編ミステリーのラジオドラマ化。1981年にNHKで放送されたらしい。黒後家蜘蛛の会と呼ばれる紳士の集まり。ゲストを招いて話を聞き、奇妙な出来事を皆であれやこれやと推理するのだが、いつも答えは五里霧中。最後は、傍に控えるレス…
藤沢周平の短編二編。語りは柳家小三治。「驟り雨」 研ぎ師の嘉吉は、実は盗人でもあった。その日もある家へ入る算段をつけていたところ、あいにくの雨に降られる。近くの神社の境内で家の様子をうかがっていると、そこに人影が…。都合、三組の男女が、嘉吉…
長江俊和・著/新潮社(2014)〈あらすじ〉著者である長江俊和は、さる知り合いから、掲載直前でとりやめになった原稿の存在を知らされる。あまりにも興味深い内容だったため、長江は、各方面との調整を取り、4年をかけて出版にこぎつけた。若橋呉也というルポ…
〈あらすじ〉藩内で急速に独善的な采配を振るうようになった堀将監。藩の行く末に不安を覚えた旧執政側の家老、杉山頼母らは、上意討ちを決意。その先兵となるべく白羽の矢を立てられたのが、井口清兵衛。腕は一流だが、病の妻を抱えて介護と日々の暮らしに…
ジャン=クリストフ・グランジェ/高岡真 訳/創元推理文庫トルコの政権内部にも根付いているという(本当に?)極右勢力、灰色の狼(ボズグルト)について大変丁寧に語られている。かつては世界の覇権を握ったオスマン帝国。その崩壊後も、帝国復活を目指す民族主…
カール・ハイアセン 著/千葉茂樹 訳フロリダに転校してきたロイは、通学のバスの中から、裸足で全力疾走する少年を見かける。激しく興味をかきたてられたロイは、少年の素性を探ろうと決意。だが、彼の前には、いじめっこというには性質が悪過ぎるダナ、ダナ…
筒井康隆・著/新潮社幼い頃、別荘での事故によって下半身が不自由となった重樹。かつての別荘は実業家の木内氏が買い取り、氏の趣味であるロートレックの絵が飾られていることもあり(重樹の体とロートレックの体のこととも合わせて)、ロートレック荘と呼ばれ…
山城新伍・著/廣済堂文庫この本は本当に面白いので、是非とも多くの人に読んでもらいたい!しばらく前に「あかんやつら 東映京都撮影所血風録」を読んだ。その途中で、猛烈に読み返したくなったのが、「おこりんぼ さびしんぼ」である。ということで久々に再…
川本三郎・著/平凡社(2005年刊行)ハードカバーで579頁に及び、それに伴い取り上げられている作品も数多い。が、「時代劇ここにあり」というタイトルから、普通の時代劇好きが手に取ると、若干違和感が残るセレクトにもなっている。それは、序文、あとがき、…
初代ゴジラ関連本中、これはかなり濃密な一冊。まさかと思うような人たちへのインタビュー取材により、第一作目のゴジラがまた新たな一面をみせてくるような、それほどの密度の高さ。これまでも、マニア以外は誰も喜ばない話しばかり…と、最近の特撮映画本を…
かつて松竹と東映で、特殊撮影を担った矢島信男。東宝のように恵まれた環境ではない場で、叩き上げた男の一代記。この本は、その特撮人生を総ざらいするような内容。作品の映像を確認しながら、本人が語っているのをまとめているようだ。
川本三郎・著(中公文庫/2000年)
宣伝素材はみていて本当に愉しい。特にポスターとロビーカードには、どれだけ胸を踊らせたか。懐かしく甘い記憶と共にそれはある。それと割引券。上映が近づくと、近所の映画館の人が、学校の前で配っていたものである。我も我もと、それに群がっていたもの…
夢枕獏・著/小学館巻頭の献辞にこうある。 「メリアン・C・クーパー氏に そして 円谷英二氏に―」 時代小説としての面白さは勿論、怪獣小説としても本気のものを描く。キングコングとゴジラの産みの親へ捧ぐというのなら、それは相当な気合の入りようなのだ…
伊藤勝男・著/青弓社1988年刊行の、映画のガイド本。ビデオバブル期、本当にクズのような映画のビデオが、ゴロゴロしていた時代。玉石混交な作品群から、玉をみつけて紹介しようという、太い心意気に満ちた、熱い一冊。その熱さゆえ、芸術的映画を盲信し、隠…
『セル』(スティーヴン・キング/新潮文庫)を読む。最初に「リチャード・マシスンとジョージ・ロメロに」とある。生者と死者の時間が入れ替わるのはまさしくマシスンの『地球最後の男」だし、死者の風体はまんまゾンビめいている。といってもロメロが作り出し…
子供の頃は素直にミッキーマウスが好きとかチェブラーシカが好きとか、編み物が好きとか、ビーズ刺しゅうが好きとか、男の子がそういうことを言っても、まあかわいいわねえ、で済む。年を重ねて行くうちに、野球とかサッカーとか、あるいはギターとか、女の…
『外国映画 ハラハラドキドキ ぼくの500本』(双葉十三郎/文春新書)。幅広くハラハラドキドキさせる要素が主体の500本を択んでみた、と最初にあるように、実にバラエティに富んだ内容である。しかしいくらハラハラドキドキと言っても、驚くのはここに紹介さ…
『奇面館の殺人』(綾辻行人/講談社ノベルス)。綾辻作品を読むのは久しぶり。首と手の指を切断された状態で発見される死体。おりしも10年に一度かという吹雪に襲われた別荘は完全に孤立。犯人はおそらくこの中にいる…というガチガチの本格ものの御膳立てで展…
『特攻現在百物語 新耳袋殴り込みリターンズ』(ギンティ小林/洋泉社) 幽霊が出る現場へ赴いて、失礼な行為で霊を挑発し、怒って現れる(であろう)その姿をカメラに収めようという無茶な挑戦を描くドキュメント。『怖い噂』は読んだことはないが、映画秘宝読者…
以下、若干のネタばれ。子供向けのミステリ叢書シリーズの一冊だが、ふんふん、と思って読み進める。猫殺しという陰惨な事件を少年たちが解決しようと奔走する話と思っていたら、思わぬ方向へ展開。読んだ人間全員がおそらく仰天すること受けあいのラスト… …
『誘拐作戦』(都筑道夫)を読む。意外にブラックな前半で一気に乗せられる。気味の悪いグロテスクな状態を笑いへと持っていくどこかカラリとしたところが面白くまたそのドライぶりが恐ろしくもあり。中盤ではギャグとして描かれている場面があり、その辺りの…