眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

少年と自転車 ★★★★★

監督 ジャン=ピエール、リュック・ダルデンヌ/2011/ベルギー=仏=伊/

シリルは、児童養護施設暮らしの少年。父は迎えに行くと言ったきり音沙汰はない。父との繋がりを必死で模索し、前に住んでいたアパートに押しかけ、自転車はどこにあるかと探し回り、その度に周囲の人々に迷惑をかけ続ける。診療所でシリルの行動に巻き込まれたサマンサは、自転車を見つけ出し、彼に手渡す。シリルは彼女に「週末だけ里親になって」と頼む。

大人に対した時の警戒したシリルの目が、それまでの人生を全て物語る。12歳とは、大人になりつつある年齢である。自分の立場について理解しつつも、芽生え始めた自我の扱いに迷い、実際にどう行動すればいいのかが判らず戸惑う。映画では、その原因を碌な大人と接して来なかったこととし、断罪している。子どもが成長していく過程で如何に大人の存在が重要であるか。大人は、子どもに対して何が出来るのか。何をやらねばならないのか。ほとんど無償の愛情を注ぐサマンサの行動にひたすら感嘆し心を震わせる。二人の関係が密になった、サイクリングの場面に思わず涙が出た。劇中シリルに接する大人は、男性は皆冷たく、女性は皆優しい。ダルデンヌ兄弟が男性だけに、男性の無理解と拒絶をより意識したのかもしれない。