眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

砂上の法廷 ★★★

監督 コートニー・ハント/2016/アメリカ/NETFLIX/

ブーン・ラシターが殺害された。容疑者は息子のマイク。弁護を担当することになったラムゼイにとって、ブーンは駆け出し時代に世話になり恩師と呼ぶべき存在であり、今は大切な隣人でもあった。しかしマイクは、事件後一切口を開かなくなる。証人たちは嘘を言っている者も多々、ラムゼイは不利な立場に立たされる。

手の打ちようがない中でラムゼイが助手として採用するジャネルは、人間嘘発見器の異名を取るほど優秀で、証言台に立つ人々の嘘を見抜いていく。そこからなんとか弁護のための足掛かりをつかもうとするのが面白い。誰もがそれぞれの保身のために嘘をついていることが、半ば前提となって物語が進む辺り、現実の裁判でもこんな風だったらどうしたものかと暗澹たる気分にさせられる。思い込みや好き嫌いで、まともな判断も処理もされないまま、それで人の人生に決断が下されるのだから。が、そのような曖昧で嘘にまみれた証言の中だからこそ、マイクが黙秘し続ける理由があり、彼の決断が有効に作用するという展開はなかなかに皮肉が効いている。また、証言は嘘でも、回想で描かれる過去は真実というズレも面白く、誰がどんな風に嘘の証言をするのか、そのさもしさや見栄が垣間見える辺りに、人の弱さが露呈していてこれも皮肉な味わい。

結末の付け方や人間関係の怪しい(妖しい)描写に、ミステリ的な味がうまく散りばめられ、一種のフィルムノワールのような空気も纏う辺り、嫌いにはなれない。94分というランニングタイム、キアヌ・リーヴスのナレーションで進行する作り、中途半端になっている個所など、本来はもっと長かったのではないかとも想像してしまうのだが、だとしても、いい感じにコンパクトにまとまっていて、見逃すには勿体ない佳品。