眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

エアポート’77/バミューダからの脱出

監督/ジェリー・ジェームソン

 

ずっとLB収録だと思い込んでいたが、スクイーズ収録であることを知り、中古DVDを購入。相当久しぶりに再見した。

 

ジャック・レモン演じるドン・ギャラガー機長は、非常にエネルギッシュな人物で、レモンがこれまでに演じて来たキャラクターとは少々趣を異とした感じがあった。コメディだと、騒々しい人物でも笑ってみていられたが、そのようなエネルギッシュ過ぎる人物を笑わせるわけでもなく大真面目に演じると、小うるさく、乱暴で、独善的に見えるという思わぬ方向にキャラクターがずれていくことが驚きで、しかし感情移入することが映画の面白さの総てではないとするのなら、なるほど旅客機を救うヒーローがこんなあまり好きになれない人物であってもいい、それを面白いと言うことも出来るかな、とは思う。

 

ビリングでは、レモンに次いで出るのが、リー・グラント。今となっては、彼女がそこまで当時のハリウッドで知名度が高く、認められていたことが判りにくくなってしまったため意外な感じがする。実際、ほとんど感情や心理が描かれることのない大半の人々の中にあって、グラントが演じているカレンという女性は、比較的人間味のある描き方がなされていて、それだけ彼女にはこの映画の中の人間模様の核になるように配慮がなされていたのだろう。が、クリストファー・リーが演じる海洋学者の夫との関係はあまり良好ではない。夫は仕事が忙しく、またカレンが自分の部下(同僚?)と浮気していることに気付いているためか、ともすれば妻に対して冷淡とも言える行動を取りがちで、妻はそれが不満でいつも夫を困らせるようなことばかりする…という夫婦のやりとりは、ドラマとしてはそれほど中身の濃いものでもなく、よくあるメロドラマのようなもので、そもそもがパニック映画がグランドホテル形式のドラマとなる以上、仕方がないこととはいえ、なんとも面白味が薄い。しかしこの夫婦の話はまだマシな方で、ジェセフ・コットンとオリヴィア・デ・ハヴィラントの話とか、ジェームズ・スチュワートと娘の話とか、ほとんど形だけといってもいいほどのささやかさである。まあ映画の眼目はそこにないと言われたらそれまでなのだが…。それにしたって、「エアポート75」もこんなに薄味だったろうか?

 

監督のジェームソンがテレビ映画出身ということもあるのかないのか、機内の描写がこじんまりとしているのも少々物足りず、迫りくるパニックにもさほど趣向が無く、あまりサスペンスが盛り上がらない印象だったが、ギャラガーが機外へ出て、いよいよ救出に動き出す段になるとさすがに面白く、特に機体にエアバッグのような風船を付けていく様子を丁寧に見せているのがよろしい。段取りをきちんと見せることで、いよいよ飛行機が浮上してくるところがきちんと見せ場になるというものである。かなり大きな機体のセットも作られており、それを湖に沈めて撮影もしているようで、特撮(合成)も効果的に使用され、クライマックスはなかなかに迫力があり、サスペンスたっぷりである。77年度の日本国内の興行成績では、外国映画では7位だったらしいが、これくらいに面白ければ、そのくらいお客さんが入って当然であろうと思う。テレビ的にこじんまりと書いたけれど、やっぱりそこは大作映画の魅力があるのである。