眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

古本屋台(Q.B.B.著/集英社) 感想

屋台の古本屋…。如何にも年季の入ったオヤジの屋台は、掘り出し物の本と、一杯だけ100円で提供される焼酎と共に、古本好きな人々の深夜のオアシス…という、実に渋い内容。1話2ページ(基本12コマ、題名を抜くと11コマ)で描かれる、本好きな人々と(一見)気難し気なオヤジとの交流。主に中年以降の男たちの、特に何と言うこともないけれども、酒と本があればとりあえず最高な感じが、本当に読んでいて楽しく幸福感に満ちている。極端なペーソス(最近言わないね)にも向いていないし、詩的にもならない。全然おしゃれでもなく、ただの古本屋とオヤジ、ただの中年客たち。ただただあるがままな感じがよかった。そして、変わらぬQ.B.B.らしい笑いにあふれた内容なのもうれしい。

岡崎武志荻原魚雷と思われる人物が出てくるところも可笑しい。わたしは知らなけれど、他の人たちも実在するのであろう。会話の内容はもしかしたら、何かの場で久住兄弟のどちらか(あるいは両方か)と、本当に交わされたものかもしれない。作りごとと本当のことがいい感じで混じり合い、境界があいまいになって、古本屋台も存在するもののように思えてくる。単行本化にあたって書き下ろされた部分には、終わりゆく日常と、変わらぬ日常とが描かれていて、少し感動的。本棚の奥で古本になって、枯れた手触りになるのを楽しみに待つ…などと考える。そんな風情がこの本には似合う。