眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

漫画の感想

ダルちゃん 第52話

最終話自分を偽って生きて来たダルちゃんが、人と出会い、自己を見つめ、本当の自分を手に入れるまでの道のりは、同じような感覚を持つ人間にとって、まるで自分のことのような痛みを伴う。それだけにラストシーンは、その痛みを分かち合える人々へのエール…

古本屋台(Q.B.B.著/集英社) 感想

屋台の古本屋…。如何にも年季の入ったオヤジの屋台は、掘り出し物の本と、一杯だけ100円で提供される焼酎と共に、古本好きな人々の深夜のオアシス…という、実に渋い内容。1話2ページ(基本12コマ、題名を抜くと11コマ)で描かれる、本好きな人々と(一見)気難し…

資生堂/花椿 連載コミック 「ダルちゃん」

最初はお気楽な派遣社員のお話かと思っていたが…。こちらからどうぞ。ダルダル星人となっているが、描かれているのは、自分という個を殺し、周囲に合わせることで生きている人。偽りの快適を選んだことで、逆に人生を他人に委ねてしまい、自分を失ってしまう…

「恐怖の重層」 感想

遺跡発掘中に見つかった奇妙な形の地層。人の横顔が積み重なったようなその異様な地層の下には、子どもの骨があった…。時が流れて2017年。父の十三回忌の法事を終えた麗実に、恐ろしい事態が発生する。先日のEテレ「漫勉」にも登場した、伊藤潤二の新作。「…

「こどもエイティーズ」 感想

柘植文・著/ぶんか社(2010)80年代に子ども時代を過ごした人向けへのノスタルジー。刊行は2010年。仮に舞台設定を1980年とすれば、刊行時点からでも優に30年前の話ということになる。ずいぶん遠くまで来たなあ、と思う。最初の数話は、懐かしアイテム(スプー…

森山中教習所

真造圭伍・著/小学館2010年発行の作品。他人のやることにあまり意識を払わない、自分中心に行動する大学生・佐藤清高は、ひょんなことから打ち捨てられた中学校を使った教習所で、免許を取ることになった。そんな夏の出来事。登場人物のキャラクターに味わい…

エデンの東北・愛蔵版(1)

深谷かほる著・竹書房「愛蔵版」というタイトルから、新装版だろうと思っていたのだが(単行本は既に絶版なので)、実は新刊だった。それを知ったのは、つい先日のことである。奥付は2013年6月1日初版発行となっている。1年以上も前!全く何をしているのか。床…

怪談

楳図かずお作品集から。オムニバス。道に迷って辿り着いた屋敷で、不気味な女に血を吸われる少女。不作の農村で食べ物を食い荒らす鬼の面を付けたおばあさんの恐怖。柳の霊(?)に取付かれた男。そして雪女。吹雪の中の山小屋で、遭難してしまった4組(5人)の…

黒いねこ面

「赤んぼう少女〜楳図かずお作品集〜」から。初出一覧によれば、週間少女フレンドの1966年(昭和41年)30〜45号に連載。「赤んぼう少女」は翌年の30〜45号で連載となっているから、まるまる1年前の作品になる。この2作の作画には明らかに差があり、「ねこ面」…

赤んぼう少女〜楳図かずお作品集〜

角川ホラー文庫から出ていたもので、他に「黒いねこ面」「怪談」が収録されている。40代半ば世代では、「のろいの館」というタイトルの方が、通りがいいのではないかと思われる。秋田書店から出ていた単行本(↓これですな)。 書店の棚に並んだ背表紙に見える…

神の左手悪魔の右手〜影亡者

楳図かずお・著/小学館物語の方向を、読みながら大体想像するわけだが、時にそれをはるかに凌駕する凄まじいものが飛び出してくることがある。楳図作品は、そういった意味ではかなり高レベルの、想像外への飛翔が数多く見受けられ、読むたびに悶絶するので…

神の左手悪魔の右手〜黒い絵本

シリーズ中、一番凶悪な作品。ももちゃんは足が不自由で、ベッドに寝て暮らしている。退屈な毎日で愉しみなのは、パパが描いてくれる絵本。しかしその内容は、血みどろでグロテスクなものだった。そしてそれは現実だった。パパは、娘を喜ばせるために、次々…

神の左手悪魔の右手〜女王蜘蛛の舌

楳図かずお・著/小学館医師の高品先生が知り合いのペンションへ行くのに、想と泉もくっついていく。ペンションは先生の友人の木玉さんが経営しているが、やけにやつれているのが気になる。しかもこのペンション村ではすでに10人が死んでいるというからただ…

神の左手悪魔の右手〜消えた消しゴム

楳図かずお・著/小学館凄惨な「錆びたハサミ」から一転、シリーズ中、一番地味な話し。美人でやさしい、みどり先生は、ほんとうにやさしいのか?想のクラスメートの大輔は、人は死んだら正体が現れる、と言い出す。みどり先生の本当の顔をみたくないか?…彼…

神の左手悪魔の右手〜錆びたハサミ

楳図かずお・著/小学館(1987年)昨日、Eテレで「SWITCHインタビュー 達人達」という番組にたまたまチャンネルが合った。楳図かずおX稲川淳二!途中からだったけれども、そのままみましたよ。スタジオでのトークはいまいち噛み合ってない感じだったけれども(…

『Z〜ゼット』1巻(相原コージ/日本文芸社)をよむ

相原コージが描くということは、ゾンビマンガであってもギャグと下ネタは避けて通れるものではないのだが、しかし全体としてはこれはかなり真っ当なゾンビもの。しかも今まであまりお目にかかったことのないシチュエーションによる話もあったりして、そこは…

『うどんの女』(えすとえむ/祥伝社)を読む

面白かった。心のうちで、「こういう場合はこんなふうな誘いがあったりして…」などと妄想をふくらませる前半が可笑しい。35歳の女性と21歳の大学生の距離感が微妙でよろしく、淡々としつつも滲みだすエロティックさもよろしく…。うどんが媒介する恋模様…。う…

フライングガール(笠辺哲/小学館)をよむ

とても面白い。ちょっと、ぼーっとした主人公の山田くんが見舞われる受難の物語。彼がどんなに正直に話したところで、それが本当のことだとはとても思えないようなことが、トッド博士のところに起きているのだが、あまりにぼーっとしているので周囲には既に…

「ワルタハンガ〜夜刀神島蛇神伝〜」全3巻 3月31日(日)の日記

『ワルタハンガ〜夜刀神島蛇神伝〜』全3巻(藤澤勇希/秋田書店)を読む。テレビ番組制作会社の企画で、ツチノコ捕獲ツアーに参加した酔狂な人たち。主催者だけが知っている謎の孤島で、帰りの船は10日後にしかやってこない。軽い気持ちで参加したツアー客もい…

「放浪息子」第14巻 3月13日(水)の日記

『放浪息子』14巻(志村貴子/エンターブレイン)を読む。シュウの悩みごとはほとんど描かれなくなってしまった。シュウの物語で気になるのは安那との関係についてのみで、初期はともかく10年の連載期間中に群像劇へと変わっていったこともあり、もはや主役とい…

「世界の合言葉は水」 1月31日(木)の日記

『世界の合言葉は水』(安堂維子里/徳間書店)を読む。すごくよかった。水をテーマにした作品集。人類=地球=水の関係が、これほどバリエーション豊かに描かれるとは。人類はどうして宇宙へ行こうとするのか、どうして男と女はひとつになろうとするのか、たっ…

「木造迷宮」第4巻 1月30日(水)の日記

『木造迷宮(4)』(アサミ・マート/徳間書店)を読む。サエコさんが主役の『特別な一日』が良かった。ほろりとします。しかしながら4巻の目玉は、犬の散歩で学校近くに来ると、とんできたボールをよけて池に落ちて、着物が乾く間、代わりにセーラー服を着て何…

{BUTTER!!!」第1巻 1月29日(火)の日記

いまさら『BUTTER!!!』1巻(ヤマシタトモコ/講談社)を読む。おそらく誰もが指摘するであろう。何しているのか全然わからない…。今、どんな動きをしているのかが絵だけではさっぱりわからないのは、社交ダンスを描く上では非常に不利。が、ダンスマンガなのに…

「シャーロッキアン!」第1巻、第2巻 1月23日(水)の日記

『シャーロッキアン!』(池田邦彦/双葉社)の1巻と2巻を読む。絵柄の感じから、ほのぼのとした作品だろうと思って読み始めたら予想外…。車教授と教え子の愛里が出会うさまざまな出来事を、シャーロック・ホームズの活躍をヒントに解決していくミステリ。原典…

「たべるダケ」第1巻 1月11日(金)の日記

『たべるダケ』(高田サンコ/小学館)1巻を読んだ。本当にたべるだけ。話らしい話なし。そこが潔い…のか?こんな女の子、本当にいたら変だろう。人の生活に突然割って入って、タダ飯を乞い、うまそうにたいらげて去っていく。しかし共に過ごしたその瞬間を、…

「食の軍師」第2巻 1月10日(木)の日記

『食の軍師』(泉昌之/日本文芸社)は2巻が出ていたんですね。全然知らなかったよ…。本郷が勝手にライバルと思っている力石はほとんど登場せず、東京近郊、またそれなりに遠いところまで遠征して、直観で店に入り、やられた、当たったと一喜一憂する、という話…

ちづかマップ(1) (衿沢世衣子/小学館) 感想

出版元が講談社から小学館へと変わっての第1巻。登場人物や設定はそのまま、レギュラーキャラの説明も特になしで、同じようにお話は進んで行く。今回は、日本橋、お茶の水、堀切、そして近江(滋賀県)の四つの町を、ちづかとその仲間たちがだらだらと巡る。…

Daddy Long Legs (勝田文/集英社) 感想

表題作は言うまでもない、ジーン・ウェブスターの『あしながおじさん』。舞台を昭和初期の日本に移して描かれているが、勝田文作品としては非常に真っ当かつストレートな内容で、素直に読めてしまうのがいいですね。一方、『天馬』『パーラー』『シンガポー…

「野ばら」第1巻 感想

『野ばら(1)』(高田築/エンターブレイン)表紙で女の子に抱かれている謎の白い生き物、しょむたんが可愛い最初の3話でぐいと惹き込まれる。そのしょむたんを見てて思い出すのは、教育テレビでやってた『いちにのさんすう』のタップ。 タップとそっくりなダン…

「主に泣いてます」第6巻 感想

『主に泣いてます(6)』(東村アキコ/講談社)1巻ごとに、赤松や泉にとって(読者にとっても)新たな刺客が登場してくるのはもはや反則。今回は勅使河原耕三巡査。美人には限りなくやさしく、ブスにはこれ以上ないほど冷酷。この世の男の真実を体現する恐ろしい…