眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

怪談

楳図かずお作品集から。

オムニバス。道に迷って辿り着いた屋敷で、不気味な女に血を吸われる少女。不作の農村で食べ物を食い荒らす鬼の面を付けたおばあさんの恐怖。柳の霊(?)に取付かれた男。そして雪女。吹雪の中の山小屋で、遭難してしまった4組(5人)の人間が語る怪談、という体裁。眠ってはいけないから、怖い話をして夜を明かすという神経は信じられないところ。楽しい話しをする方がいいと思うのだが…。

第二話となる、農村のおばあさんの話しだが、これを語る青年は、おばあさんに追いかけられ必死になって逃げ、この山小屋に逃げ込んだという。そのとき一緒に逃げていた妹は、おばあさんにつかまってしまった。彼女がどうなっているか心配なんです…という嫌な余韻を残す話し。三話目の柳の話しは、牡丹灯篭、最後の雪女はまんまである。一話目の少女は蜘蛛の網にかかった状態だし、考えてみれば、どれも追い詰められる話しだ。意図的にか偶然にか。夢のなかでみた、ひからびた自分の顔のようになるに違いないから、眠った顔をみたくないのです、という一話目の少女は、正体を現した雪女に凍死させられるとき、一番最後に殺される。しかも彼女だけ、顔がはっきり判るように。これは雪女のやさしさなのだろうか。雪山で遭難した4人が死んだ本当の理由は、誰も知らない…というところが、怪談ぽい。オーソドックスな内容でありながら、強迫観念めいた楳図テイストが散りばめられており、興味深く読める。