眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

エデンの東北・愛蔵版(1)


深谷かほる著・竹書房

「愛蔵版」というタイトルから、新装版だろうと思っていたのだが(単行本は既に絶版なので)、実は新刊だった。それを知ったのは、つい先日のことである。奥付は2013年6月1日初版発行となっている。1年以上も前!全く何をしているのか。

床に積まれて塔になった本の束が、ひとつふたつと横に並び、それがやがては壁になる。壁は長い時間をかけて、二重三重と厚みを増す。奥の一番下に、どんな本が眠っているのか見当もつかない。部屋の整理中であることは、前々から書いているが(一向に終わる様子はないが)、そのなかで、壁を取り崩した奥から、「エデンの東北」をみつけたのである。

A5判サイズの薄手の単行本は全10巻。その後、「ラブ&ピース!ピース!」(エデンの東北ノスタルジックシリーズ1、となっている)、「エデンの東北・高校編」(新書判サイズ)が刊行されている。「ラブ〜」は、何も変わりないが、「高校編」は、頭がよくて男前、しかも心も男前のオダくんを主人公にしたもの。といっても普通に、おねえちゃん(さゆり)も出てくるんですが。読み返していると、やっぱり面白い。これで終わりか〜、と寂しく思ってたところに、新刊が出ていた、と知ったわけで、今更ながら即効で買いました。

深谷かほるの生まれ育った、東北地方へのノスタルジーで描かれているのだろうが、たぶんにフィクションの部分もありそう。小学生のバカな長女(たぶん作者の幼少時)、保育園に通うまだ小さい弟、そんな子供たちを扱いながらも、子育て漫画になっていないところがいい。あくまでも描くことは、作者のノスタルジーから生まれたもの(つまり現実)であっても、フィクション…お話を紡ぐことにあって、1話1話が、きちんと面白く、時にかわいらしく、時にせつなく、時に爆笑もあったりして、なによりも愉しく描かれていることが素晴らしい。主人公一家だけの話しではなく、周囲の人々も描かれて、それぞれの視線でみたお話もあったりして、それがまた胸をうったりもするのだ。

まだ連載が続いているんですね。また一冊にまとまるその日を愉しみにして、暮らして行きます。