眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「こどもエイティーズ」 感想


柘植文・著/ぶんか社(2010)

80年代に子ども時代を過ごした人向けへのノスタルジー。刊行は2010年。仮に舞台設定を1980年とすれば、刊行時点からでも優に30年前の話ということになる。ずいぶん遠くまで来たなあ、と思う。

最初の数話は、懐かしアイテム(スプーン曲げ、ガンプラなめ猫など)を話しに入れようとしていて、少し無理をしている感じ。また、主人公のあやが、なかなかに自分勝手なキャラクターになっており、ちょっと辛い。個人的な好みの問題だが、傍若無人キャラが苦手。が、しばらくすると、作者の描きたいように描けるようになったのか、あやは、間抜けな度合いの高い子どもになっていく。ちょっと他人には伝わらないと思うけれど、「バカな子ども」と「間抜けな子ども」とでは、かなりニュアンスが違っている。「間抜け」の方には、どこか微笑ましいような、憎めないものがある。ノスタルジーという点では、こちらの方が読んでいて愉しい。ちょっと「団地ともお」と似ている気もする。

いい話風にまとまりそうでも、そこに着地させないところにも惹かれる。一部に、人生の真実みたいなものも、見えたり見えなかったり。でも、ちゃんと笑わせて終わるところがさすが。

子どもの頃から、人は、人生について考えているものだな、と思う。当時は判らなかったけれど、色々考えていたことの先は、現在の人生に繋がっているんだな、と。