眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

森山中教習所


真造圭伍・著/小学館

2010年発行の作品。

他人のやることにあまり意識を払わない、自分中心に行動する大学生・佐藤清高は、ひょんなことから打ち捨てられた中学校を使った教習所で、免許を取ることになった。そんな夏の出来事。

登場人物のキャラクターに味わいがあり、その大方がダメな部類に属ずる人々。第三者にとっては有害でしかない人物ばかり。しかし、そこに自己憐憫のようなものはなく、ドライに描かれているので、湿っぽさもねちっこさもない。暴力的な物語でもあるのに、カラリと乾いた笑いに抜けているのも良い。

誰もが、誰かと密接に結びつきたいと思っている。物理的な距離は近いけれど、微妙にずれている。しかし、完全に逸れているわけではなく、大きく括れば、すぐ傍にいる人ではある。そのあたりの、近過ぎず遠すぎず、な距離感の置き方が心地良い。しばらく時間が経ってみると、あれはかけがえのない時間であり、人々であったのだ、と思い出すような、そんなぼんやりとした空気が、夏の暑さと共におぼろげに浮かんでくるような、大変夏っぽい青春もの。これからの時期にぴったり。

森山中教習所 (ビッグコミックス)

森山中教習所 (ビッグコミックス)