眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

ジョーカー・ゲーム/柳広司(角川書店)


戦時下でのスパイ養成機関というと『陸軍中野学校』を嫌でも思い出すが、結城中佐によって誕生したD機関の活躍というか暗躍というか、そのスパイ活動を描く短編5編。どれも面白いのだが全体的に薄く軽い印象。もっと骨太な冒険・スパイ小説を想像してしまっていたので。むしろ小味なミステリ小説として読むほうが愉しめるかもしれない。スパイが直面する緊張感やサスペンスは意外とそれほどでもなく、物語の芯は、どういうことなのか?というWHYやHOWについて追及していく物語であり、そういう物語作りはミステリ的であると思うからだ。軽い読み物という感じだがそういうスパイ小説があってもいい。なかなか愉しめたが、このミステリーがすごい!の2位ってのはちょっと大げさ過ぎないだろうか。