眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

世界侵略:ロサンゼルス決戦 感想

アポロシネマ8にて。

監督はジョナサン・リーベスマン。『テキサス・チェーンソー・ビギニング』くらいしか見ていないが、あれから比べるとだいぶ上出来。

冒頭の緊迫感が素晴らしいのだが、そのあと24時間前に戻るという構成が残念でならない。一気にそのまま続けて良かったのに。せっかくの盛り上がりを削いでしまったのは失敗だと思うが、海兵隊員たちのキャラクターを一通り見せるためには仕方がなかったか。戦闘の中でそれが見えるような脚本であればそれにこしたことはないのだが、まあ安全策を取ったということかもしれない。しかし風雲急を告げる緊張感はやはりこの手の映画の醍醐味。敵はあっさりと主要都市を制圧してしまい、海兵隊のロサンゼルス奪還が始まる…のだが、物語の主人公に選ばれた海兵隊の一個小隊が命じられるのは、3時間後に迫っている空爆までの間に、敵陣にある警察署に取り残されている民間人を救出する、というもの。物凄く局所での、しかも救出作戦。物語のスケールは大きいのだが、同じような作戦を遂行している他の小隊もおそらくたくさんあり、それぞれにドラマがあるはずで、そんな中の名も知れぬ人々のドラマなのである。よって『インデペンデンスデイ』にはならず、アーロン・エッカートを中心とした小隊の地獄の救出と脱出に絞られる。映画としては当然こじんまりとした印象となるが、派手な戦闘・銃撃シーン、確執をかかえた隊内の人間関係、民間人の運命、バスでの移動によるサスペンス等々が、隙間なく並べられ飽きさせない。ドキュメントタッチのカメラは少々面倒臭く鬱陶しいとは思いつつも、街や敵の状況を俯瞰や遠景で見せるなど、開けた空間の場面を巧みに挿入し、映画のスケール感を持続させるあたりの計算もなかなか憎いものがある。何よりも、最近あまりない、白兵戦が展開する戦争映画である。アクション映画として愉しみたいところ。大きなスクリーンと音響設備の良い劇場でご覧頂きたい。

敵が非常に人間臭く、倒れた仲間を引きずっていく姿や、最後に撃墜されて地上に落ちた司令船(?)を見つめる宇宙人(だったと思うのだが。小隊の方だったかな)の呆然とした後ろ姿など、やたら人間めいており、それらの場面には正直、ちょっとグッと来てしまった。他にも、耕運機みたいな兵器とか、超兵器や超科学を持っているのにミサイルや銃弾でどんどん死んでいくとかのその弱さ。宇宙人の侵略映画には、政治的な意味が込められているという話に準ずるのなら、今の時代であれば明らかに敵の向こうには、テロリストや、湾岸戦争やアフガンの空爆といったものがイメージされている。宇宙人の姿を通して現実の戦争をそこに見る、ということになる。映画の中ではドキュメントタッチなシーンが随所にあるが、テレビクルーが密着しているわけでもないから本当はドラマとしてはドキュメントタッチである必要も意味も無い。が、宇宙人にメタファーとしての意味を見るのなら、ドキュメントタッチにはそれなりの意味があるということになる。戦争や紛争を我々はテレビ映像で日常的に見ているのだから。

しかし宇宙からの侵略者って、それほど強くないのが多いように思うけどな。ミステリアンとかナタール人とかX星人とかさ。科学力は凄いけど、皆結局負けてるし。兵器を使うヒト型の宇宙人は弱いんじゃないか。怖いのはボディスナッチャーとかゴケミドロとか、植物系とか粘液系とかだよな。