眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

12月31日(土)の日記


宇宙人ポール』をシネリーブル梅田で観る。監督はグレッグ・モットーラ

『スーパー8』がスピルバーグ映画へのリスペクトを高く掲げ、色んな事をやった割にはあまり映画自体は面白くないという残念な結果に終わったのは今年の夏の話。そしてこの年末、もっと直接的な見せ方でリスペクトを表ししかも観客も気持ちいい、この『宇宙人ポール』がそんな映画になったのは、宇宙人との友情という単純で判りやすいことを、肩肘を張らない軽いタッチで描いたところにある。

昨今のジャンルのひとつとなった感じもある、冴えない男たちの青春模様ものという体裁に、宇宙人を投入するアイディアが面白くて、でもこれは極端なことをいうと宇宙人ではなくて、得体のしれないおっさんであっても成立する話であり、ドラマの核になっているのは、SFや宇宙人という部分ではない。映画の軸がぶれないのは、小手先のアイディアやパロディに溺れないドラマ主体の作り方にあって、結局のところ娯楽映画の肝はそこにあるんですよ。その上でのリスペクトであるわけです。SF映画ファンとしてはニヤニヤする場面もあるが、それもまあ、判ったらもうちょっと面白いよ、というスタンスなのがよかった。

コメディ映画としては、笑いのネタが次に繋がってさらに大きな笑いを呼んだり、それがドラマの局面に影響を及ぼすといった構成の妙などはなく、瞬間的な笑いにしか終始しないために、それほど激しく笑える映画にはなっていない。しかし、笑いの部分はいわば味付けの一部であり、実際はゆるい男2人組の珍道中を描いた一種のロードムービーと思いたい。冴えないがゆえの複雑な心情(ニックの嫉妬心)など、柔らかくは描いてあるけれど、結構しんみりしてしまう普遍的なものだと思うし、ちょっとシリアスな人生観も隠しているところが嬉しい。後半、アクション主体に変化する流れは、二重三重の追跡になる展開の面白さもあって痛快な見せ場になっており、アクション映画ファンとしても納得の出来栄えではないか。

しかしながら映画秘宝筋は、ちょっと煽り過ぎ。鬱陶しい。そこまでしないと関心は呼べないということかもしれないが。