眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

5月16日(水)


捜査官Ⅹ』 於:なんばパークスシネマ 

監督はピーター・チャン

前半はミステリータッチで展開。捜査官の役回りである金城武の行き過ぎる捜査方法には、いまどきの映画の体を装いながらも、さすが香港映画と言いたくなる強引さがあって、ニヤニヤしてしまう。ギャグのつもりはないと思うのだが、やりすぎてて笑いに抜けてしまう。勿論、意識的に笑わせているところもあるが(寝ているドニーの姿をしげしげと眺めているところとか)、全体としては少々神経が鋭敏になりすぎている金城の過剰な捜査への取り組み方に異常性を匂わせるほどで、そこが面白いのだが、しかしこの映画は基本的にはアクション映画なので、そこらでのドラマの広がり方はそれほどしない。途中で主役が金城からドニーへと変わってしまうために、村に帰ってきた金城の存在が微妙なものになってしまい、特にアクション映画としての流れでは正直邪魔なものに感じられてしまう。本来なら、友情めいた奇妙な関係の男の話、としてそれはそれでアクションとしてもドラマとしても昇華されてもいいと思うのだが、どこかでねじがずれたとでもいうべきか、いまひとつ盛り上がらないのは残念。ただし、後半は殺戮集団のボスであるジミー・ウォングが恐ろしいまでの存在ぶりを見せつけ、これはちょっと尋常ではない迫力と恐怖があり、黒社会との付き合い云々は別にしても、とてつもない黒いオーラを感じさせる貫録で圧巻。ジミーさんは昔の映画ではアクション下手だったけど、ここではそうは思わせない押し出しの強さでドニーを圧倒。化け物めいた凄まじさ。ある意味かっこいい。今年のベスト悪役の一人といってもいいくらいだった。

これはたまらん、と思ったシーン2つ。ドニーが村を出るという金城を、近道があるといって山奥の道に誘うシーン。画面が潰れるかと思うほど暗い。いくら夜が近く、鬱蒼とした木々に囲まれているとはいえ。殺されるのではないかと金城が不安を感じるこのシーン、物凄い低音がぶうううううん、とハウリング気味に鳴り響く。本当、うそだろ、と言いたくなるくらいにビビっている。このシーンの後、耳の調子が一瞬おかしくなるほどで、恐怖と不安の表現とはいえここも過剰すぎる。凄いなあと思った。それと村人が惨殺され、怒ったドニーがその正体を明かすシーン。おれの本当の姿はこれだ!という、ここはカッコ良過ぎる!ヒーロー降臨!みたいな感じで痺れた。このあとのクララ・ウェイとの対決がまた凄いんだ。もしかしたらここが一番の見せ場かもしれない。

セットの作り込み方、村のロケーションがしっかりしており、子どもが成人式(といっていいのかな)を迎え、大人の服を着る習慣や、紙を作る作業の様子など、小さな村の生活感がしっかり描かれているのも素晴らしかった。見応えのある作品。