眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

石上三登志さん死去

石上さんの映画批評を初めて読んだのは月刊スターログの『あるSF映画評論家の告白』の『バンデッドQ』についてのもの。『バンデッドQ』が初公開時にラストの一部がカットされた、ということももう遠い昔の話になってしまったが、テリー・ギリアムのこの傑作について、実に丁寧にどういう映画なのかを語りつくしているといってよい内容であったと思う。提示された疑問、謎に向かってそれを解き明かすために推論を重ねて行く作業によって映画の核心に迫っていく、その過程はさながらミステリ小説を読み進めるかの如きスリルと興奮に満ちていて、映画を読み解くとはどういうことか、このとき初めて一介の高校生は知ったのだった。もちろん、この読み解きは、ミステリ小説の批評家でもあった石上さん特有の筆の進め方であったということもあるのだが、何よりも映画批評がこれほど面白い、という事実に衝撃を受けたものである。心よりご冥福をお祈り致します。

今年出版された『私の映画史−石上三登志映画論集成』はまさに石上さんの映画評論人生がつまった集大成的な一冊だが、第2弾としてミステリ・エンタテインメント小説評論集が予定されていた。が、出すにはあと200部くらい売れないとダメなんだとか。買え!まだ読んでいない人間はさっさと買え!

私の映画史―石上三登志映画論集成

私の映画史―石上三登志映画論集成