眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

アルゴ

国外へ脱出させるためにイラン人を騙す方法として取られるのが偽SF映画の製作。誰にも知られぬために、映画業界人が騙される。映画の完成を期待した人(当時の観客)が騙される。事情を知らない人間は全て騙されるので、アメリカ国民はおろか、世界中の人間も騙される。騙すことが根幹をなす、命がけのコンゲームのようだ。またイラン側も英語が判っているのに、わざとプレッシャーをかけてボロを出させようとペルシャ語で捲し立てるという、騙しのテクニックを使う。そもそも映画というもの自体が、観客を騙す、騙ることで成立するジャンルのものであり、騙すこと、騙ることが、映画製作という作業と重なっていることを作り手は意識的にとらえているように思われる。そういった客観性の上に成り立つ映画なので、非常に理知的、実にスマートな作りになっており、題材的には半ばコメディのようなものにも拘らず、下品にならないタッチが美しい。

当時のファッションが懐かしく、特に男たちのヒゲ、髪形が絶品のりアリティ。