眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

月夜のお曜/中島守男(リイド社)


『吉田家のちすじ』の時代劇版、みたいなものを期待して読み始めたが、ちょっと違っていた。お曜を真ん中において、長屋の馬鹿たちとその右往左往が描かれている。多香子さんを中心として、吉田家の馬鹿たちが右往左往するのと一見似ているようだが、吉田家でどっしりとした存在感を放つ多香子さんとは違い、お曜は非常にミステリアスに描かれているためになかなかその正体や本心が見えない。それは物語の構造上、どうしてもそうならざるを得ず、仕方のないところではあるのだが、もっとお曜の色っぽく艶っぽいところを見たい、という下心満点なおっさんには正直ちょっと物足りない。最後に至って、お曜という女が一体何者なのかが判るようになっており、それはそれでほろりとさせる良い話だし、長屋の馬鹿たちのやりとりは愉しく笑わせてくれるので、つまらないわけではない。というかむしろ、なるほどこういう話も描けるんだな、と感心したほど。エロコメディとしては物足りなくとも、中島守男の漫画家としての力には期待が高まった。

ところで、第15夜『大家を潰せ』での秀さんたちの会話を読んでて思ったんだけども、

「しかし河原でどうやって煮炊きする気でぇ」「そらぁあれよ七輪持ってよ…」「鍋持ってさ…」「こうござ敷いちゃったりなんかして…」「縁台なんかもおいちゃったりなんかして…」「酒なんか呑んじゃったりして」「たーのしい感じになってきたとこで…」「普段気になってることをそれとなく聞いちゃうと…」「そうそう聞いちゃうと…」「そううまくいくかね…」

これスチャダラパーっぽくね?と思ったんですけどどうなのかな。