眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ黄金のスパイ大作戦


監督は増井壮一。以前に期待と不安が半分、と書いているが、来年も増井監督で行くというのなら、大いに期待したいと思う、それほどの出来栄え。思えばここ数年、どうにも低迷していた劇場版クレしん、今回でようやく長いトンネルを抜けた、という感じ。何よりも、ギャグは盛り沢山にありながらも、一本、芯の通ったドラマをちゃんと展開させているのがとても良かった。レモンとしんのすけの関係を軸にして、それぞれの親との関係もそこに絡めていき、それが無理なく着実に積み上げられていく。ギャグに偏らず、物語をきちんと描こうとしているのが映画に厚みを与えている。敵キャラのナーラオとヨースルが、かつてメモリー横町での手痛い失敗からのし上がって国の頂点にまで上り詰めた、という設定もグッとくる。ジャズをベースにした音楽が鳴り、湿っぽい背景がちらりとこうして出てくるなど、子供には若干意味の判らないような場面にもやられた。さらりと大人向けの描写。彼女たちの最後の姿も美しかった。徹底して屁にこだわった下品さが愉しく、最終的にレモンにあそこまでのことをやらせてしまうのも可笑しい。

しかしながら、あくまでも偶然とはいえ、科学技術の愚かしい結末には、現在の日本の状況が重なって見え、なんともやるせない気持ちにもさせられる。