眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

孫文の義士団

なんばパークスシネマにて。

監督はテディ・チャン。だが特別監督としてアンドリュー・ラウ(『インファナル・アフェア』)が参加。と同時にプロデューサーであるピーター・チャンも監督していたというから、如何に大規模な撮影だったが判ろうというもの。実際、香港の町並みのセットは巨大で、エキストラも厖大、お金のかけ方は本当に超大作。しかも映画の出来栄えはそれを無駄にしない実にしっかりとした娯楽活劇で、心底凄いな、と圧倒された。

比較される作品として『十三人の刺客』が挙げられているように思うが、こちらはキャラクターの立ち方という点でより娯楽度が高い。派手な(もっと言ってしまえば漫画的な)アクション演出が、よって更に生きることになり、観る側の興奮度は、『十三人の刺客』よりもはるかに高かった。殊に映画の後半は、ほとんどリアルタイムで1時間が経過する『真昼の決闘』方式での激闘となるのがまた凄く、タイムリミットをじりじりと待つ緊張感が非常に生々しく感じられる。こういう感覚は最近味わったことがない。その中で一人また一人と命を散らしていくボディガードたち。あまりにも皆に死亡フラグがきれいに立ち過ぎているので、前半での彼らの笑顔がいちいち胸にせまり、劇的な見せ場でもって退場していくさまが圧巻。敵も味方もあっぱれ、という感じ。てっきり、ドニー・イェンが主役みたいなもの、と思っていたら群像劇の中の一人という扱いであり、しかも護衛にきちんと参加するわけでもない、というのも衝撃だった。裏側で秘かに戦っている、それを誰も知らない、何のために彼が戦っているのかも判らない、そんなシチュエーションが泣かせる。こういうのには弱い。ただ、群像ドラマとしてクライマックスが締められているので、アクション映画としての突き抜けた高揚感がもたらされないことになっており、その点では不完全燃焼。ドラマとしては感動的なんだけど…。

この戦いと時をほぼ同じくして、『天地大乱』や『北京オペラブルース』といった戦いもあったのであろう。そう思うと、また感動もひとしお。革命へと至るまでの様々な人生と苦悩が、この作品だけでなく過去の映画の記憶とも混ざって、個人的にはグッと来てしまった。

『レッド・クリフ』がつまらなかった、という人(実際つまんなかったが)にぜひ観てほしい、香港映画界の意地と力がたっぷり詰まった大作。これはDVDが出たら欲しいな。