アンノウン
TOHOシネマズ鳳にて。ダークキャッスルの製作だし、監督もジャウム・コレット=セラなので、ホラー映画と思ってもおかしくないが、ヒッチコックを思い出させるサスペンス映画。
事故にあって4日間の昏睡から目覚めると、どういうわけか自分が自分ではなくなっていた!この偽物め!と別人に罵られ、妻は奪われ、全く訳が判らない。異国ベルリンで一時的な記憶喪失に見舞われたリーアム・ニーソンの受難の物語。
物語の真相もなるほどそういうことかと愉しめるものだが、『アンノウン』というタイトルが、単に記憶を失った状態のリーアムを指すだけでなく、その背後の、この事態の真相にもかかわるものであり、リーアムに協力するダイアン・クルーガーとブルーノ・ガンツも祖国を捨て、あるいは失っている人たちであることなど、その意味を二重三重にしたものなのが面白い。ジャニュアリー・ジョーンズの金髪、写真展でのやりとりなど、まるでヒッチコック映画なところも愉しい。写真は人の顔のアップで、目を開いているものと閉じているものが並べられていて、真相は見えているか?と問いかけているようで、これまた愉し。個人的には、この時点でまだ全然見えていませんでしたが。
ブルーノ・ガンツとフランク・ランジェラが対峙する場面はいわば映画のもう一つのクライマックス。緊張感と同時に、映画を見る喜びを感じる。この場面は、省略されても別にドラマの流れ的には問題がない。だが、非常にじっくりと二人のやりとりが描かれており、結果それが見せ場へと昇華されている。脚本ではどうだったのかは判らないが、ガンツとランジェラを一つの画面で演じさせることが、如何に魅力のあるものであったか、ということではないのかな。