眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

カブのイサキ(4)/芦奈野ひとし(講談社)


間違った荷物を持って飛び立ったイサキ。カジカとサヨリがその後を追う。タテの道を抜け、御殿場へ。降り立った空港の人々とのやりとりや、カジカとサヨリの噛み合わないコンビぶりなど、明確な物語もなく、どこまでものんびりとしたやり取りが続く。そういう意味では何も変化は無く、好きな人には至福の時間を過ごせるだろう。

ペン先が割れているのか?と思うようなタッチの絵がちょっと辛く感じるようになってきた。荒っぽく、雑に見えてしまう。絵が下手とは言わないが、以前は、味わいがある、と言い換えられる線の魅力があった。また本来は相当な画力でもって描くべきであろう巨大化した世界を、余白や白味を多く取って描いていることの違和感など、個人的にはそこにも少しついて行けなくなってきた。『ヨコハマ買い出し紀行』ではそれが良い方向に振れていたのに、どうして物足りなくなってしまったのか。世界観はSFであっても、描かれることは、なんということもない日常の出来事、という内容では、1話完結方式ではっきりと物語の形を作る方が何を言わんとするのかが明確になるのではないか。どこへ行くのか先がまるで見えない続きもの、となると、形があいまいになって薄くなり、それで元々の作者の持ち味が感じられなくなっているのではないか。ゆるい空気がいいのだ、とする意見があっても全然構わないのだが、個人的には、だとしてもゆるすぎる、と言いたいところ。次も買うかどうか、微妙な気持ち。