眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

インシディアス 感想

TOHOシネマズなんば・別館にて。

ネタばれしています。







監督はジェームズ・ワン。長年のコンビであるリー・ワネルとまたしても組んで、しかも『パラノーマル・アクティビティ』(3作目が11月1日公開!まだやるのか!)のオーレン・ペリが製作に参加している、ということから話題になっているはずのホラー映画。この組み合わせから考えると、ドキュメンタリータッチのホラー映画に、残虐趣味が色を添える的なものを想像してしまう。が、今回はパトリック・ウィルソンに、ローズ・バーンといった名の知れた俳優を使っており、さて実際はどんな映画に?と思っていたのだが、まさか、こういう映画だったのか!と個人的にはちょっと衝撃を受けた。

パトリックとローズ夫婦は子供が3人いる幸福な家族、大きな家に引っ越してくる。が、そのときから怪異が起こり始め、おびえた彼らは別の家にさらに引っ越すが、そこでも同じようなことが続く。邪悪な何か、は家に憑いていたのではなく、彼らに憑いてしまったのだ。邪悪な存在によって長男は昏睡状態に陥り、彼を助けるために霊媒師が呼ばれるが、彼女が話し出すのは、パトリックの過去も絡んだ意外な話だった…というような展開。邪悪な存在がカット変わりで突然姿を現わしたり、画面をさっと横切ったりするのは『シックス・センス』的なテイストで、これは昼夜関係なく現れるのでタチが悪く、観客にとっては心臓に悪い。しかしそれらがあまりにもはっきりと姿を見せ、あまつさえ襲いかかってきて危害を加えようとする描写を見せつけられて、実録心霊ホラー路線ではないことがはっきりとする中盤、邪悪な存在とは別のさらに恐ろしい存在があって、それは「悪魔」であると断言して一気に娯楽ホラーへと舵を切り、迷える魂の救出劇という『ポルターガイスト』+『さまよう魂たち』みたいな展開になる。あっち側は、呪われたものたちが跳梁跋扈する闇の世界で、救出に向かうパトリックの道行はまさに地獄巡りと呼ぶにふさわしく、映画はそこでいわば、お化け屋敷に入って行くのと同じ状態に突入するのだ。

想像していたものがまるで違う方向へ進んで行く場合、しらける場合もままあるが、まさかそっちへ行くかと驚かされる場合もあるわけで、その境目は観客の趣味嗜好の問題でしかないと思うのだが、この作品の場合は、なかなか良い方向へ行ってくれたなと。素直に愉しくて面白い。ハッタリも効かせてテンポよく、こじんまりとした作りで無理をしていないのも良かった。

劇場には高校生から大学生といったあたりの客層が多く、上映前から嬉しがって興奮状態なのは結構なうえ、上映中の反応もまずまず、終了後もクレジットになるやどよどよどよ…と仲間同士で会話を始める様子や、口々に怖かった、と言ってるのを見ると、そうかそうか、となんとも微笑ましい気持ちになる。というわけで、ホラー映画慣れしたコアな人たちや、スレてしまったおっさん連中には、ちっとも恐ろしくも怖くもない映画。でも軽い気持ちで見るとそんなに悪くないはず。ホラー映画を怖がれるのは若者の特権ですな。