眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

4月2日(月)の日記


旅する缶コーヒー』(マキヒロチ/実業之日本社)

短編集。良い作品だった。さまざまな人々、さまざまな境遇、さまざまなドラマ。各話に共通するのは缶コーヒーが出てくるということだけのように思われる。が、どの話もすれ違いによってドラマが生まれており、その話の中で、姿を消す、ということがなんらかの形で描かれている。すれ違いや喪失といった部分が、この作品の主題であって、缶コーヒーはそのドラマを支えるわけでもなく、ただそこにあるだけのもの。まして『舞踏会の手帖』とか『ウィンチェスター銃73』みたいなものではない。缶コーヒーというしばりなどは実はどうでもよくて、作者の指向するものは別のところにある。でも、あとがきを見ると、たぶん作者はそれに気付いていないと思われる。自分が何を描いているのかもっと自覚的であれ、と言いたい。次にも期待している。