眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

4月25日(水)の日記

楳図かずお こわい本(3) 顔』(朝日ソノラマ)

押し入れの整理中(終わる見通しほぼゼロ)にこの文庫本シリーズを発見し再読。第3巻の収録作品は『おそれ』と『偶然を呼ぶ手紙』の2作。『おそれ』は『おろち』の『血』や『姉妹』と同系統の作品。美しい姉とそうではない妹(といってもかなりの美人)の物語で、美しい姉が醜い顔になってしまったとき一体何が起こったか、という悲劇とも恐怖とも言える凄まじさ。それにしてもこんなに同じような話を繰り返すというのは、ネタ切れ気味のせいなのか、執拗なまでの美と醜への強迫観念めいた感情ゆえなのか。『偶然を呼ぶ手紙』も、むしゃくしゃして悪意を込めて書いた適当な手紙が偶然にも実在する人物に届いてしまい、恐るべき偶然が不幸を呼ぶという話で、手紙を受け取った人物は幸薄そうな不細工な女性、という、またしても美と醜の問題がメインモチーフとなって描かれていく。しかし楳図かずおは、美しい人にも、醜い人にもさほど感情過多になることがない。常に客観的で、美しさも醜さも断罪することはあまりなく、かといって積極的に救うこともない。その引いた視点が、通俗的なメロドラマに終わらずに、楳図作品独自の世界観を作りだしている。人の心の不可思議さをじっと見つめる視線があまりにも冷徹過ぎて、楳図かずおという人の底知れなさを感じて恐ろしくなる。

ジョー・カーナハンリーアム・ニーソンによる『THE GREY』が『THE GREY 凍える太陽』の邦題で8月18日の公開が決定。嬉しい。だがどれくらいの規模での公開になるのだろうか。松竹系みたいだけど、大阪ステーションシティシネマのみ、みたいなのは勘弁してくれよな。