眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

9月16日(日)の日記


第三回 午前十時の映画祭 何度見てもすごい50本』〜『ブラック・サンデー』於:TOHOシネマズ梅田・アネックス

監督はジョン・フランケンハイマー。1977年のアメリカ映画。

やっとというか、とうとうというか、遂にというか。第二回のときに見逃してしまい、もう二度とスクリーンで相まみえることはないのだろうと涙を飲んだのだが、こうして無事に念願をかなえることが出来たのはなんとも喜ばしい。スクリーンが映えるとはこういうことをいうのだなあ、と。アクションシーンの引きの場面が生きるのは、大画面で観るということが前提であって、70年代の映画を観るとそれが良く判る。現在のアクション映画はもう少し、映画の力を信じてもらいたい。と思うのもおっさんだからだろうか。

映画が始まると、いきなり画面が赤茶け気味なのに仰天、しかも非常に粗い画質。しかも傷も散見され、まあ2年間、日本中で上映されているプリントだから傷がつくのも判るけど、それにしても。映像のクリアさ自体を言うのなら、DVDで観る方が断然美しくはあろう。だがこの粗さもまた70年代映画の殺伐とした感じを思い出せるには充分過ぎる。前半は、モサド・FBI側とパレスチナ側の攻防をじっくりと見せて行く。淡々と展開させながらも、その淡白さが非情さにもつながっている感じ。弱火でチロチロと青白い炎を見せる感じ。正義と悪の戦いというわかりやすい対立ではなくて、どっちも悪、といった趣なのがやはり面白い。ブルース・ダーンもロバート・ショーも集中すると人の命なんて全く眼中にないのが薄ら寒くも凄まじい。ちっとも共感出来ないヒーローと、思わず同情してしまう悪人。加えて敵と味方双方にアメリカ人が絡む作劇なのも複雑な味わいを増している。簡単に割り切れないところに社会派としての意地を見る。それらを踏まえて後半は、あまりにも映画的過ぎる見せ場の連続で、DVDで何度も観ているのに、今回は、本当に面白過ぎて涙が出そうになる、という特殊な体験をしてしまう。こういうことってあるんだなあ。ヘリコプターの爆発シーンがちゃちいとかよく言われるけど、スクリーンで観るとそんなこともないんですよ。そのスピード感が凄いので、ちゃちさを勢いで見事に飛ばしてしまう。じれったいほどの飛行船上でのやりとりなど、わかってるのにハラハラしてしまう。娯楽映画の文句なしの面白さである。本当に面白い映画である。

ジョン・ウィリアムスの音楽が素晴らしくて、サスペンスフルなスコアが映画を否応なく盛り上げる。

聴いているだけで、思いだしてドキドキしてしまいますね。

ちなみにお客さんは女性がちらほら、それとオタクかマニアか映画好きか、という感じの男性。あとはほとんどが一人のおっさん。見事におっさんが多くて、それも良かった。おっさんたち一人一人が、やっぱりフランケンハイマーはすげえなあ、と心のうちで感動し、そのあと一人で昼飯食べながら、あるいは一杯呑りながら、その気持ちを反芻し、家に帰って棚から『ブラック・サンデー』のDVDを取り出してまた観てしまう、そんな風な空気を上映後に勝手に感じました。