眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『ゼロ・グラビティ』をみる

あべのアポロシネマにて。3D字幕版。

監督はアルフォンソ・キュアロン

宇宙空間で作業中の人間を襲う、爆破されたスパイ衛星の破片。シャトルが破壊されてしまった今、生き残った二人が地球へ生還するための唯一の希望は、彼方にみえる国際宇宙ステーション…。

地球のまわりを破片が一周するまでに90分。90分の間に、生き延びるための方法を考えて進めていかなければならない。そして映画の上映時間が91分。この映画を観始めて終わるまでの間、この時間が命の継ぎ目に遭遇する感覚なのだということを頭におきつつみる面白さ。

危機的状況下のサンドラ・ブロックの心情を、映画は全く忖度してくれない。これで終わりかと思われる過酷な展開の中、淡々と時間が過ぎていく。過去のつらい記憶に思いがとぶことはあっても、回想にはならず、映画ならではの時間の増幅もない。ただ生々しい感覚の時間経過があるだけ。その非情さと緊迫感はただ事ではない。

効果音とも音楽とも言える使い方をされる心臓の鼓動、破壊のスペクタクル、宇宙空間の無音、3D効果を考えた撮影、ワンカット長回しのもつドラマ性、絶望から再生へのサンドラの心理の動き(そのきっかけになる地球からの音、そしてジョージ・クルーニーの存在。彼でなければならない陽気さと軽さ)…。この映画の原題はGRAVITY、意味は、重力。それを意識して見ていただければ、ラストシーンのサンドラ・ブロックの姿には、感動を越えた、崇高といってもいい何かを感じられるかもしれません。圧巻の一作。

ちなみに、地球からの声が聞こえてくる場面、地球側から描かれた『アニンガ』という短編がある。