眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

もう一度みたい映画 その6

好敵手」は1962年のイギリス=イタリアの合作映画。監督はガイ・ハミルトン。この映画の存在を知ったのは、石上三登志さんの書かれたものからだった。小説で読んでいた007が映画化されると知り狂喜する若き日の石上氏だったが、テレンス・ヤングはともかく、「ゴールド・フィンガー」で新たに監督となった、ガイ・ハミルトンの手腕には不安を覚えたという。そこでハミルトンの旧作である「好敵手」を探して、やっと見て、それで安心したという話なのだが、当然、こちらとしては、その「好敵手」という映画が気になって来る。知る人ぞ知る映画だったのか、それともほとんど語られることのなかった映画だったのか。この文章を読んだその時点でも既に相当、マイナーな映画であった。

しかし、80年代にはまだ見る機会があった。サンテレビなどで、ときたま放送されていたのである。名前だけを聞くほとんど幻の映画を、テレビの平日昼間や深夜に探し、見つけては愉しみにしたもので、この作品もそうしたなかで、やっとみつけた!という感じであった。allcinemaから、解説をコピーさせてもらうと、

『第二次大戦下のアビシニアで、D・ニーヴン演ずるイギリス軍の将校が、偵察中に不時着、イタリア軍に捕まってしまう。しかし、策略を以て脱出した将校は、逆に敵のイタリア軍を捕虜にするが……。双方の軍に芽生えた奇妙な友情を描いた戦争コメディ。』

となっており、その通りの映画である。ニヴンはいつものニヴンで、イタリア軍アルベルト・ソルディとの掛け合いの楽しさがあり、途中で攻守が入れ替わる面白さがあり、戦ううちに兵隊たちが仲良くなっていく…という、微笑ましくも、熱いものがある映画なのだ。周囲が火事になって、森のなかの池にみんな飛び込んで、小さな島に集まって両軍の兵隊たちが肩寄せ合うあたりの可笑しさと一体感に、高校生だったわたしは、笑いながらも、静かに感動していたのだが、特にこの映画のラストシーンには、本当に感激した。そのラストシーンをみつけたので、貼る。イタリア語版だが。

捕虜となったイタリア軍は、収容所を送られることになる。ここでのニヴンの敬礼。共に戦い、心通わせた者同士に流れる思い。そしてソルディの笑顔。最近は言わなくなった、いわゆる、ペーソスという表現が相応しい。久々にこのラストをみて、なんとかして全編みたいと思う気持ちが高まった。なんとかならんかな、これ。

Youtubeには、シネスコサイズの鮮明な画像のものもある。

テレビ放送時のものか、それともソフト化されているのか。いずれにせよ素材としては、きちんとしたものが存在しているようなので、なんとか日本での放送、商品化に結び付けられないものか…。