眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「告白」 感想

脚本・監督 中島哲也/2010年/日本

まだ幼い一人娘を殺された中学教師森口(松たか子)。終業式の日、このクラスの生徒二人が殺したのだと話し始め、復讐を宣言する…。

では如何様な復讐がなされるのかと固唾を飲んで見守ることになるが、以降森口は退職して画面にはほとんど出てこず、やがて二人が自滅していくように転落する様子が描かれていく。それが、この事件に関わった人々の「告白」という形で綴られていくのが趣向。娘を殺した生徒A、B、それぞれの、母親との関係が物語において大きな主題となり、三者三様の母親の姿が子どもたちの姿から照射されていく。いずれも現代社会の実像を映し込み、現実の暗闇ににじり寄る。

中島哲也はCM的なキャッチーかつポップな映像を巧みに利用して、現実の上辺の残酷な軽さを表現しつつ、その下に横たわる現実を暗い質感で統一し、犯罪映画としての重力を底に据える。おそらく(今のところの)彼のベストワーク。何の救いも残さない苛烈なドラマを、これほどの娯楽映画として昇華させたことも特筆すべき。

2017.3.7./BSプレミアムで放映/