眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「キングコング 髑髏島の巨神」 感想

監督/ジョーダン=ヴォート・ロバーツ

巨大生物の調査機関モナーク所属のランダは、ランドサットによって発見された太平洋のさる島を調査する許可を取り付けることに成功。ランダ一行は、元SASの傭兵コンラッドを雇い、ベトナム戦争終結で帰還命令の出たパッカード大佐率いる一小隊の最後の任務という護衛をつけて島へ向かう。しかしそこは、ランダ達が想像していた以上の怪獣無法地帯だった。
ベトナム戦争終結に納得のいかない軍人、巨大生物の存在を世に知らしめようとする科学者(地球空洞説を信じている)、心に傷を負った傭兵、隠蔽される謎を暴こうとするカメラマン、第二次大戦時に島に墜落した戦闘機パイロット。主要な登場人物たちは、このような背景を背負って登場し、映画の中でちらちらとそれぞれの心情を語る。せっかく、魅力的な俳優と設定を与えられながら、映画自体は彼らの方を向くことはあまりなく(最低限の描写に抑えられ)、怪獣大戦争の方に注力されていく。

見せ場の連続で綴られる映画というのが、実は苦手である。見せ場で繋ぐのならそれなりの趣向を考えてくれないと退屈してしまう。この映画では、決してそういうわけではないはずなのに、これまでに何度もみたようなことを、何度もみたように描いているとしか思えず(部分的にハッとするところはあるにせよ)、途中で睡魔に襲われた。その単調な映画の構成にやっと乗れるのが、クライマックスあたり。少々遅すぎた。一番興奮したのが、エンドクレジット後のおまけだった、というのも笑えないジョークである。

「闇の奥」であるとか、コンラッドであるとか、「地獄の黙示録」であるとか、そういう面からのアプローチもされている映画である。遅れて来たベトナム戦争映画という見方も出来る。戦争の結末に不満で、多くの部下を失った軍人が、なんとか雪辱戦を果たそうとする狂気じみた思いは、「地獄の黙示録」のカーツ、ウィラード、キルゴアの3人の狂気がブレンドされたような感じで面白い。厳密に言えば、密林の王は、コングがそうなるのだろうが。しかしそれらは細部の面白さでしかないと思うのである。気付く人や判る人だけが面白がれる部分であり、怪獣が暴れる映画には基本的には無関係である。かといって怪獣が暴れるだけでは不満だ、というわたしのような観客もいるわけで、多くの客を納得させる映画を作るのも大変ですな、というか無理ですな、と思うしかないのであった。

面白いと思わない映画の感想を書くのは苦痛。好きな映画、面白かった映画についてだけしか書かないようにしよう。前にもそんなことを書いた気がするけれど。

ジョン・ギラーミン版「キングコング」の感想も書いています。これは好きな映画。青臭くすらある主人公たちの思いが砕け散る、ある種の青春映画になっていて、胸に残る一本。と思う人間は、世界に100人もいないだろうな。