眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

黒川芽以出演 「警視庁捜査一課9係 season12」第3話「殺人ピアノ曲」 感想

音楽出版社の社長(藤真利子)が殺害された。現場は自宅だったが、同居しているピアニスト(夢咲ねね)とその妹(梶原ひかり)には、全く予想外のことだった。現金が消えていたため強盗殺人の線で捜査は進むが、現場に残されていたブルーチーズとブランデーの取り合わせの奇妙さや、三人には確執があったことなどが表面化するにつれ、意外な真相が浮かび上がる。
脚本は瀧川晃代。監督は長谷川康。

夢咲ねねの昔の恋人が、自宅近くの防犯カメラに映っていたという場面がある。ここで、新人ピアニストの黒川芽以とすれ違うのだが、このとき元恋人は、彼女を振り返ってみている。が、彼のその行動について説明はない。クラリネットを辞めたあとも音楽情報はずっと追い続けていて、それで知っていたのだろうか。意味ありげに見えたが、それだけのことだったか…。時間の制約があるとはいえ、昔の恋人、新人ピアニストといった傍役たちは救われないまま。救われなくてもいいのだが、ドラマとしては多少のフォローが欲しいところではある。何故そんなことが気になるのか。世の中に刑事ミステリはあふれかえるほどあり、新鮮さも皆無な中で、どこにドラマと自分との接点を見つけるかと言えば、傍役たちの人生ではないかとは常々思っている。同じようなことしている中で他のドラマとの違いを生むのは、そういう細部にしかないと思うのだが、それに気付いている製作者は少なく、それならばこちらが進んで細部に注目していかなければならないという、奇妙なねじれが生じているのが最近の刑事ドラマだと思う。10年前20年前と大して変化のない(むしろ後退している印象すらある)状態だと、視聴者側にとって、本筋などもはやどうでもよくなっている。テレビの不振はことあるごとに話題に上がるけれども、ドラマに関してはテレビ局サイドの保守性が退屈なものにしている最大の原因だろう。自分で自分の首を絞めているのだが、それに気付いているのかいないのか。

黒川芽以は、予告にはワンカットも登場していない。ま、一度見ただけなので記憶違いの可能性もあるが、映っていたとしても1秒にも満たない時間だったろう。それほどまでに、その存在は軽いということである。本来ならば、主役のピアニスト、あるいはその妹でも良いはずなのだが、更にその脇のポジションに。確かに犯人役も多いけれど、どんどん傍役へと進んでいるようで寂しい。本筋においても重要なのは、姉妹がお互いをかばい合う様子であり、犯人の心情にはあまり寄り添ってはくれなかった。どうして殺人に至ったのか説明に付随するだけの心情描写。その中でも、期待に胸躍らせながら、逆に一気にコケにされて傷つく、まだ初々しさすら漂う女性をちゃんと演じている。ちゃんと演じているからこそ、黒川芽以の立ち位置に切なさを感じてしまうのだが…。

黒川芽以のことを書くのも久しぶり。出演番組が無いわけではなく、怠慢で書き損ねているだけ。もうちょっとちゃんと書きたい。

放送日/2017.4.26(水)/21:00/テレビ朝日