眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

フェア・ラブ(別題:不器用なふたりの恋) ★★★

監督 シン・ヨンシク/2010/韓国

カメラの修理一筋のヒョンマン。かつての親友が死の際に残した「娘の様子を見に行ってくれ」という言葉を渋々受け入れ、ナムンの元へ。彼女は情緒不安定な状態にあった。ナムンはヒョンマンに好意を示し、やがてそれは彼に人生で初めての恋をもたらすが…。

ヒョンマンは、心の機微にあまりに疎く、20世紀から心理的な成長を遂げていない。いや、彼を始め、兄夫婦、友人たちは、恋愛観や自立に対して旧弊な考え方の旧世代の人間だ。ヒョンマンの甥(どうでもいいような恋愛話をしてうんざりさせる)や、作業所の社員2人、妙に懐いているカメラマンは、完全に別の世代として描かれており、その差に面食らう。やがて二人に終わりの時が近付くが、自分の命が50・50となったときに、相手と対等であることの意味を知るという遅すぎる気付き。もやもやした感情を反芻し答えに向けて整えていった結果、皆で海に行ったときへと戻っていく。初めて、自分の中に嫉妬という感情が芽生えたとき。この気持ちが恋と気付いたとき。ナムンの「やり直しましょう」という言葉に込められた、ヒョンマンの切ない願いが悲しい。ユーモアはありつつも淡々とした静かなタッチが印象に残る。