眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

ダンケルク ★★★★

監督 アンリ・ヴェルヌイユ/1964/仏=伊/スターチャンネル1/

ドイツ軍の猛攻の前に、フランス軍とイギリス軍はダンケルクからの撤退を強いられる。爆破と破壊は執拗で、思い出したように散発的に、しかし絶え間ない空爆と銃撃が続く。抗戦と言えば聞こえはいいかが、ほとんど殲滅戦のようなそこでは、あきらめが日常と化す。マイヤは所属していた隊を探しながら、イギリスの船に乗って逃げようとしていた。

ほんの数日の間に出会う人々との、わずかな交流が飄々と、淡々と描かれていく。多くの人々が死んでいき、厭世な気分、捨て鉢な思いが次第に膨らんでいく。決して声高に戦争を批判するのではなく、滲みだすようにその虚しさとうんざりした心情が描かれるところに、無常感が漂う。あちらこちらへと歩き回るマイヤは、その場その場での出来事に対して、「何が?」「どうして?」と、人々に驚いたように反応する。まるで少年のようなピュアな一面を抱えた、そのロマンティストな部分が、女のために銃を抜かせ、彼を死へと追いやる。ラストの、幻影のように見えるジャンヌは、それでも彼に、死を受け入れさせる救いではあったのだろうか。が、赤いドレス姿でひと気の去った海岸に現れるさまは、捉え方によっては死神のようでもあった。