眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

クワイエット・プレイス ★★★★

監督 ジョン・クラシンスキー/2018/米/劇場で

音に反応し俊敏に動く外宇宙からの生命体によって、人類はほぼ死滅状態。主人公一家は音を立てずにひっそりと生活することで、なんとか生き延びていた。が、不慮の出来事によって、家への怪物の侵入を許してしまい、決死のサバイバルが始まる。

音のしない(立ててはいけない)世界という設定が、ありそうでなかったものとして新鮮。外でも中でも声を潜めて物音も立てない。洗濯物は手で洗う。魚は蒸して食べる。皿は葉っぱを使う。太陽光で電気を得る。人類が消えた世界には、木々や草の葉擦れや、川のせせらぎだけが音を立てる。波や雨や雷の、自然の音しかしなくなる。世界が崩壊しつつあるのに、そこだけを取り出すとなんと平穏な静寂に満ちた世界になるか。人類という存在の無粋さが、地球にとって歪であることを結果として突きつけるようだ。どうしてこんな状況で妊娠するのか、ということについてあれこれ言われているだろうが、危険であることは百も承知の上でのことに決まっている。夫婦は、幼い我が子を失ってしまったのだ。それにいつまで生き延びられるかも判らない今、新たな生命を望んで何が悪い。夫婦の心情を脇に置くような映画の見方はしたくない。