眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

七月と安生 ★★★★

監督 デレク・ツァン/2016/香港=中国/朝日放送/

Web小説「七月と安生」の作者である七月を紹介してほしいと、映画会社から頼まれる安生。しかし七月とは永らく連絡も取っていない。「七月と安生」には、二人を主人公とした青春のすべてが語られていたが…。

間に割って入る男は、七月と安生がお互いを一番大切に思っていることを明確にさせただけ。二人の結びつきを強めた触媒に過ぎない。本当はお互いを求めているのに、それを認められないからこそ、それは愛憎という形で二人を縛り続ける。子どもは、男と七月の子ではなくて、実質七月と安生の子だ。二人が体を重ねた男であることに意味があるのだ。男のお守りを安生は持ち続けるが、お守りを通して見ているのは、七月だったのではないか。七月の愛している男、という形で七月を思っていたのだと。そして七月はこの世を去り、安生は一人残される。愛する人との子を育て、自分の中の七月を思いながら。彼女の夢を、せめて解放させてやるために、安生は小説を書く。小説の中では、七月は外国へ旅している。自由になりたいと願った彼女の夢。それを叶えさせる、それこそが「七月と安生」だったのだ。悲しくも美しい、愛の物語。