眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

12月19日(日)

なんばパークスシネマで『ゲゲゲの女房』。客層は圧倒的に高齢。でも、テレビと同じようなものを期待して見に来た観客は、がっかりするような内容ではないのかな。個人的にはとても面白かった。見る気あんのか、と自分に問うたときもあったけど、いや、これは見て良かった。家のセットや庭先の昭和な風景が、いかにもそれらしいのが嬉しい。画面も色褪せたような感じに調整されていて、これも懐かしさを感じさせる。昔の写真が退色した感じ。あんな色調。作品の舞台としては昭和36年らしいけど、監督の鈴木卓爾は昭和42年の生まれ。おそらく彼の幼少期の風景が重ねられていると見た。だって、私(卓爾と同い年。学年は私の方が下)の子供の頃の風景が再現されてるんだもんなあ。妖怪の扱いは、カットが変わるとそこに立っているとか、なんでもないようにスッと画面を横切るなど、Jホラー映画的テイストが濃厚。妖怪が出てくると、ズーンと重い音がするのも完全なホラー演出だった。川のせせらぎのような音、車が通過する音、急激に暗くなる画面、などなど、登場人物の心象風景として決して悪いものとは思えず、いきなり現在の風景が出てくる辺り、それが妖怪と同列の異形の存在のごときものに見えてくるのも、結果としてそうなっただけかもしれないが、強烈なインパクト。餓死する青年や、貧乏といった、旧時代を引きずっている現実(昭和30年代後半)と、それが信じられないほどに発展した現在(平成22年)とを対比させる瞬間でもあって、その差が生じさせる眩暈めいた混乱をうまく表している。怪我の功名であったとしても。吹石一恵宮藤官九郎も好演。おそらく、世間の不評の理由が、すべて私には逆に見えているね。

帰り道、にっぽんばし道楽に寄る。『狂い咲きサンダーロード』『高校大パニック+1/880000の孤独』『グミ・チョコレート・パイン』のDVDを買う。全部で760円。持ち合わせが全然無くって『シャッフル』とか『突撃!博多愚連隊』とか、泣く泣く諦めたよ。