眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

1月14日(金)

有栖川有栖女王国の城』(東京創元社)を読む。久しぶりに江神シリーズ読んだなあ。実際、前作の『双頭の悪魔』からは15年経って出版されたようで、いくらなんでも時間かかり過ぎ。読めないまま死んでる人もいると思うと、気合の入ったものはそうそう書けるもんじゃない、と言われるかもしれないが、やっぱりとっとと書いてもらいたい。全5作で完結、みたいなことを謳っているのならなおさらだ。本が出たのは2007年なので、ということは、私は15年+2年で17年ぶりにシリーズに接したということか(『双頭の悪魔』は出たときにすぐ読んだので)。15年分のネタが溜まりに溜まっていた、というわけでもないのだろうが、上下二段組みで500ページなのは、なかなかの読みごたえだった。だけども、期待させた謎の一部が、意外と「えっそういうことだったの?」というくらいにあっさりと描かれていくのは、正直拍子抜け。沢山ちりばめた伏線の中には、そういう盲点もあってもおかしくはないのだろうが、15年の間にやっぱりハードルは高くなってしまうので、それでは不満を覚えてしまう。犯人が正体を現してからの豹変ぶりも、簡単に描かれている感じで、ドラマティックな盛り上がりにはなっておらず、これも物足りなかった。全体としては、勿論面白く読んだのだけど、ああっなるほどそういうことか!という、論理のアクロバティック、という興奮は味わえなかったなあ。パズルがかっちりと完全に組み合わさるような気持ちよさがない。私は有栖川有栖の最近の作品は、全く読んでおらず、かろうじてテレビの『安楽椅子探偵』シリーズを見ているくらいの怠け者だが、あれもここ2作ほどどうも納得のいかない内容にもかかわらず、作者の二人が自画自賛しているようで、がっかりしてしまった事を思い出す(テレビ上、これは失敗だ、とは言えないだろうけれど)。それと同じような不満をこの作品でも覚えてしまった。まあめったに放送されないドラマと著作を一緒にしてはいけないのだろうけど。このシリーズは本筋のミステリ以外の部分の、青春模様が良くて、ここが実はもう一つの読みどころなのだが、今回もアリスとマリアの関係が、程よい親密さで描かれているのが嬉しい。判りあってるのに、どうしてもっとはっきり言えないのか、そのもどかしさもよろしい。ラストが二人のこの先の関係を暗示させてて、微笑ましい。