眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

1月16日(日)

シネヌーヴォで『海炭市叙景』を見る。孤独を抱える人々の、それぞれの人生。故郷に対する愛情と憎しみが相半ばする、愛おしくもやるせない、そんな気持ちが渦巻く中で、それでも人は生きていかねばならない。雪と風の向こうに霞んで見える、海炭の町への複雑な思いが混じり合うラストシーンが、彼らの思い、それに連なる、映画を見ている観客の持つ故郷への思いを代弁するかのようだ。が、誰もが苦い現実を生きていることを実感する先に、何処か一種のすがすがしさみたいなものも感じた。それは多分に、冷えた空気によって鋭く世界を切り取る感覚と繋がっており、だからこの物語は、寒い北国でなければならなかったのだ、とも思う。しみじみと感じいる作品だった。チラシに寄せられている文章が、堀江敏幸によるもの、というのが嬉しい。

泉昌之食の軍師』(日本文芸社)を読む。劇中、何度となく主人公の本郷は、「うめえ!」と絶叫するが、読んでるこちらは「おもしれえ!」とにやつき興奮する。相変わらずですが、その変わらなさが嬉しくも愉しい。至福のひととき。たまらぬ。