眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

1月17日(月)

海炭市叙景』のラストは、婆さんと猫、ではなかったか?昨日の時点でもうそこが判らなくなっていた。…怖い。

雪が無くなって工事が始まっていたから、婆さんの方が時間的にも後のことになるし…。年の瀬に、家を出て行った猫を探す婆さんの姿は、途方に暮れているようにも見えたし、平然としているようにも見えた。しかしこのラストで婆さんは、ふらりと帰ってきた猫に「おお、生きとったか」と声をかけて抱き上げ、たばこをふかしながら、優しくなでる。愛おしく慈しむようになでる。周囲からはバカにされ、偏屈だなんだと言われながらも、我が道を往く。孤独に生きることを突き詰めた結果、すべて達観してしまったような姿に見える。猫が帰ってきてもこなくても、それはそれ、それが人生というもの。しかし、それでも猫がいれば、その存在は何にも代え難く心を満たす。孤独の中で自分が生きるために必要なものとは何か、それがありさえすれば、孤独は敵でも脅威でもなく、友や伴侶に等しいものとなる。孤独に生きるのではなく、孤独と共に生きるのだ。この映画は、何度も思い出し、かみしめることが出来る映画だ。そういうありかたもまた美しい。良い映画を見たなあ。