眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

1月23日(日)

昨日はまず敷島シネポップで『完全なる報復』の初日。小粒なサスペンス映画はほとんど話題にも上がらない。こうして公開されたこともちょっとした奇跡と思えるほどだ。配給は我らがブロードメディア。今年も頑張って面白い作品を公開してください。監督がF・ゲイリー・グレイ、脚本がカート・ウィマーとなれば、決してつまらない作品のはずがない、というあまり根拠のない信頼を抱いて映画を見るわけだが、やはり面白かった。面白かったけれど、本当の正義とは何か、といったような社会派風味は、中盤で、復讐する男ジェラルド・バトラーの正体が明かされた瞬間、一気に荒唐無稽なテイストに。収監されているのに外ではガンガン殺人が行われ、となると外に協力者がいるはずだが、だとしたらそいつはいったい…という興味と、次はどういった方法で殺人が起きるのかというワクワク感で引っ張っていく。クライマックス以降が少々盛り上がりに欠けてしまい失速してしまうけれど、ウィマーの危ういバランスの脚本を、シリアスなサスペンスとして演出して、ちゃんと成立させようとするグレイの職人ぶりが見所。

続けてシネマート心斎橋で『モンガに散る』。台湾版『友へ―チング』みたいな映画。だけど、あれとはまた違った味わいなのは、少年時代の話に限定してあることや、極道としてではなく友情ゆえに…という、言わばロマンテイックな夢として描かれる映画なので、悲惨な物語なのに後味は意外と悪いものではない。切なくほろ苦い。ヤクザものなので親分と子分の関係が描かれるわけだが、少年たちの物語には当然そこに父と子の関係がオーバーラップする。父がいなかったり、いたり、いてもそうだと知らされていなかったり、それぞれの父親への感情が、親分や大陸のヤクザたちに重ねられて、複雑な感情の交錯が物語を形作り、それがまた止めようのない悲痛なクライマックスへ疾走していく。これまた面白い映画でしたよ。というか、良い映画だった。見て良かった。