眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

2月5日(土)

シネマート心斎橋で『イップ・マン 葉問』。映画の冒頭に前作のハイライトがあって、この作品が続編であることを知らずに見始めた人でも、あれこれはどういうことか?と思うのではないか。だからといって、それがこの作品を見るときに致命的なマイナスになっていないところが素晴らしいが、それでもやっぱり、最初から見たかったと思うよなあ、普通。『ワンス・アポン・ア・タイム 天地大乱』を劇場で見たときの微妙な気持ちを思い出した。映画そのものについては文句を言う術はないけれど。

前作が日本人を敵とした、はっきりした反日映画なのに対して、この続編は戦後の香港を牛耳るイギリス人と、香港人の軋轢がドラマを盛り上げる肝として存在していて、その違いのおかげで日本人である我々にも感情移入しやすいのが有難いところ。非常にストレートでぶれない、まっすぐな姿勢が潔く、娯楽映画の王道的な展開が心地よい。いくつかある見せ場の中でも、一番面白かったのは、武道館を開くにあたっては地元の師匠連中と勝負して、線香が燃え尽きるまで戦い続け、負けてはならない、というかなり無茶のある審査をクリアせねばならない、というところ。丸テーブル上での対決はこれで燃えなければ嘘だろう。殊にサモ・ハンとの勝負が凄まじく、テーブルの縁をぐるぐる回る辺りは本気で面白くて思わず(小さく)拍手してしまった。勿論、クライマックスの熱さも特筆ものだが。ドニーさんの魅力爆発なのは当然としても、サモ・ハンの渋さもかっこ良かった。この二人は『SPL』でも激しく戦ったけれど、それとはまた違った味わいなのが良かった。サモ・ハンはここでは動作設計もやっているが、アクションも殺伐としていた『SPL』との違いはその辺にもあるのかもしれない。あと、奥さんを演じるリン・ホンの方がドニーよりも背が高い、というのも興味深い。ドニーは公称169センチとあるから大柄ではないので仕方ないとはいえ、なんでキャスティングするときにあえてドニーより背の高い人を選ぶかな、と思うけれど、それで良し、とする所を見ると、その辺のことは気にしていないんだろうな、ドニー。実際の奥さんもモデルらしいし、出来る男には少々の身長差なんて問題ではない、ということなんだろう。ドニーとイップ・マンが本気で同化しているのはそこだと思った。それともう一つ、川井憲次の音楽が凄かった!映画の後方支援としては、これ以上望めないんじゃないか?というくらいの大迫力。参った。前作も劇場で見られたら嬉しいけどなあ。