眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「夜明けの図書館」 感想

夜明けの図書館』(埜納タオ/双葉社)を読む。

書店員が主人公、というのは最近では『本屋の森のあかり』が巻数を重ねているが、図書館司書を主人公とした作品は珍しいのではないかな。私もちょくちょく図書館に行って、あまり人が借りていないような小説を借りるのが好きなのだが、司書さんと関わりあうのはカウンターでだけなので、その向こう側にこういうドラマがあるのか、と眼を開かされた思い。勿論、フィクションなので、お話として面白く描かれてはあるが、根っこの部分には、司書さんが読むと、納得出来たり共感出来たり、またそんなことねえよ、と鼻で笑ったりできる内容になっているのではないか、と勝手に推察します。

埜納タオとしては『百花日和』と基本的には変わらない(新米が専門職で頑張る話)のだが、恋愛が絡まないというのが良い。『百花日和』では終盤になってそれらしい感じになるが、『夜明け〜』でも主人公の葵ひなこ25歳には、恋愛の予感などまるでない。そこがいい。ねむようこの『午前3時の無法地帯』なんかだと、デザイン事務所で働く女の子の苦闘を描く内容と思って読んでたら途中で恋愛ものの要素の方が大きくなってがっかりさせられたりしたもんで、仕事を頑張ることに絞った展開は個人的には嬉しい。恋愛ものは恋愛もので読むから、仕事ものは仕事に徹してくれ、と。恋愛ものもそりゃ描くのは難しいだろうが、仕事や習い事を中心にして話を組み立てて行く作業は、それとはまた違った大変さが、かなりあるんじゃないかと思うのだ。

まだ連載されているのか、終わってしまったのか(「1」ってなってないからなあ、終わっているのかな)知らないのだが、ちょっといい話でまとめれられた4編、なかなか愉しめましたよ。ただ、絵が少し粗くなってないかなー。それだけが気になった。