眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「誘拐作戦」 感想

誘拐作戦』(都筑道夫)を読む。

意外にブラックな前半で一気に乗せられる。気味の悪いグロテスクな状態を笑いへと持っていくどこかカラリとしたところが面白くまたそのドライぶりが恐ろしくもあり。中盤ではギャグとして描かれている場面があり、その辺りの洒脱さも際立つ、なんてことを思っていると終盤には如何にも本格派らしいミステリ小説の醍醐味あふれる展開となる。テンポがよくて軽快な感覚は『殺人狂時代』や『危いことなら銭になる』の原作者らしいところで、あれらの映画はかなりきちんと、都筑道夫のテイストを映画化していることを改めて感じるね。

都筑道夫というと、個人的には『退職刑事』とか『なめくじ長屋』とかのシリーズが印象深いのだが、あと怪奇・恐怖小説家としても素晴らしく、特に今更言うまでもないことだが『風見鶏』などは非常に不気味な傑作。それと、映画について書いた『サタデー・ナイト・ムービー』という著作があり、これが『センチネル』とか『エクソシスト2』とかをほめちぎるという素晴らしい内容で、これには若いころ、大変刺激を受けましたな。