眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「蝋燭姫」全2巻 感想

蝋燭姫』全2巻(鈴木健也/エンターブレイン)を読了。

中世を舞台に、王亡き後修道院へ追いやられたスクワ姫。彼女に付き従うただ一人の侍女フルゥ。二人を待ち構える運命とは…。というお話。
修道院でも誇り高く気品を湛えたスクワ姫と、姫に下賤な真似をさせることを断固として拒否するフルゥ。微妙に噛み合わない二人のやりとりは2巻の中盤あたりで一気にドラマの転換を迎え、ある意味で想像していなかった方向に進んで行く。それまでの流れからすると、スクワの変貌ぶりはちょっと異様なほどで、取り巻く諸々全てから解放されたかのように、大人びた表情は消え失せて童女のようなそれに変わっていく。当然二人の関係もそれまでとは違った形になっていく。

最初から考えられた展開だったのかどうかは判らないが、その変化に少々唐突な印象を受けてしまったうえ、「強がれ」「狼」「病のときに親が話してくれた物語」といったドラマを構築するはずの重要なキーワードがあまりうまく機能しておらず、加えてコマの運びがどこかぎこちなくてスムーズに読み進められないといった技術的な不満もあって、全体としてはいまいち乗り切れなかったのは残念。絵のタッチはかなり個性がきついけれども味わいのあるもので、男たちは割合淡白なあまり面白みのない描き方がされているのに対して、女たちはこってりと丁寧に描かれており、描きたいのはやはりそこか、という感じ。惜しい。