眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

4月15日(日)の日記


マンイーター』 於:TOHOシネマズなんば

監督はグレッグ・マクリーン。製作と脚本も兼ねている。

前日より公開の『バトルシップ』『ジョン・カーター』、土曜初日の『名探偵コナン』『クレヨンしんちゃん』と怒涛の新作ラッシュのせいもあってか、同じく初日でありながら初回が18:50から、一日で3回のみの上映という不遇を囲ってしまっているが、人が入りそうなものでもないし、仕方がないかなとは思います…。

サム・ワーシントンがなんでこんな地味なジャンル映画に?と奇妙な感じがするが、実は2006年の作品だった。6年前…と言われても、という感じだが、マイケル・ヴァルタンは『エイリアス』のあと、ラダ・ミッチェルは『サイレント・ヒル』のあと、と考えるとかなり以前の映画なんだな、と実感しますな。なぜ今更公開されることになったのかも不思議。

宣伝では謎の人喰い生物みたいにいってるけれども、予告を見ればその正体がワニであることは明白。ワニであることを隠しても隠さなくても、客の数は増えも減りもしないと思うのだが…。あ、てことは謎の生物でいい、ということか。などと思いつつ、ワクワクして観に行ったのだが、日本でも劇場公開されたワニ映画ということでは『UMA レイク・プラシッド』という作品があったけれど、あれのようなはぐらかされ方はしない。あれはちょっとオフビートコメディ的な要素があったけれど、今回はもっと直球。オーストラリアの遊覧船観光の途中で、救難信号が上がったのを目撃したため救助に向かった先が巨大なイリエワニのテリトリー内だった、という判りやすいお話。しかも恐ろしいことに、何一つとして新鮮なものはない。水面から高い位置にロープを渡して、取り残された島から向こう岸まで渡る、なんてシチュエーション、一体どれほど見たかね?と自分にも他の観客の皆さんにも、作り手の皆さんにも聞いてみたいほどである。恐ろしいのは、監督のマクリーンはそれを全く逃げることなく、正攻法で描いてしまうことだ。奇をてらった演出はなし、凝った撮影もなし、派手な音楽もなし、人々のパニックと、せまりくるワニの恐怖、そして対決、とただただ丁寧に見せて行くだけ。だがしかし、そこがいい。ここまで徹底して、目先のショック描写ではなく、着実な描写の積み重ねによってサスペンスを紡ぐというのは、なかなか出来ることではない。肝がすわっている。全体のトーンが最後まで統一されているのは素晴らしい。クライマックスのワニとの対決もまさかそんな地味なことになるとは…と衝撃的だったが、しかしこれもまたこれでいい。

パニック映画の約束事として、巻き込まれた人間たちのドラマ、というのもあるが、こちらもどろっとしたエゴがあふれ出すという素晴らしいもの。自分勝手な行動や発言に、怒りをおぼえる、というよりもやるせない気持ちにさせられるところがあって、そこも少しひねった見せ方で心をうつ。

動物パニック映画としては『ピラニア3D』とは対極にあるような作り方だが、まごうかたなくジャンル映画ファンを喜ばせてくれる一本であると断言したい。と同時に、ルイス・ティーグの『アリゲーター』はワニ映画としては本当に特異でまた最高に面白い映画である、ということも実感したな。