眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「ビースト・ストーカー/証人」 感想


ビースト・ストーカー/証人』 於:シネマート心斎橋

監督はダンテ・ラム。2008年の作品。その好評を受けて『密告・者』が製作されたので、当然期待して観た。

やるせない映画というのも相当な本数観て来たはずだが、ここにまた後々まで引きずるような作品が現れてしまった。自業自得に近い形で悲劇を纏ってしまった3人の人物の葛藤や焦燥や絶望。極限まで追いつめ、追いつめられていく運命。サスペンスとかアクションとかといったジャンル分けでは追いつかないくらいのドラマとしての豊かさ、成熟さ。

脚本はダンテ・ラムとジャック・ン(『密告・者』も担当)だが、何もかもを説明せず、ドラマが展開する中でやがて見えてくるという作り方になっている。この「そうだったか」という場面は何度かあり、その瞬間ごとにドラマの熱量があがっていく感じがあったが、実はその作劇が、ドラマの結末を際立たせるためのものであった、という衝撃…。膨れ上がった熱量が爆発し、一気に解放されていく。ニック・チョンの妻のメール、二人で青空を見上げたい、という言葉が深く胸に刺さる。

しかしドラマの密度の濃さだけで終わらないところが香港映画。アクションシーンは例によって特筆ものの凄まじさである。序盤のカーチェイスと大クラッシュのシーンも凄いが(カースタントはブルース・ロー、アクション演出はトン・ワイが担当)、中盤で、ニコラスがニックを延々追跡する白昼の繁華街がアクションシーンとしては白眉だろう。あれはほとんどゲリラ撮影だよねえ。それから、ニコラスが『殺してしまう少女には双子の姉妹がいた、』というのはちょっとトリッキーな部分だと思うのだが、予告篇では平気で出てるね。作り手も予告編製作者もそこは重要とは思っていないのか。ほとんど何も知らない状態で観たので、そこで、あっそうなのか、と思ったもので。いや勿論思いますよ、『3か月であんなに回復するもんかなあ、』と。本当、映画は何も知らないで観た方が絶対いいですな。

初日の1回目を観たが、数量限定の特製クリアファイルをもらった。嬉しい。ただ、お客の入りは半分にも満たない感じか。個人的には、香港映画をもっと観たいので、たくさんの人に劇場に足を運んでもらいたいところ。ある程度の数が見込めれば公開される機会は増えるはずなので。

写真はいまいちですが、劇場内の壁にはこのようなコーナーが。

今年は香港映画が色々公開されるみたいで愉しみ。
5月から6月にかけては(アンディ・ラウではなく)ツイ・ハークの『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』(シネマート心斎橋)


宣伝がキワモノ扱いなのがちょっと鼻につく『女ドラゴンと怒りの未亡人軍団』(シアターセブン、公開日はまだ未定の模様)


(これもまたアンディ・ラウではなくw)バリー・ウォンの『未来警察 future X-cops』(シネリーブル梅田)


7月には中国で大ヒットを飛ばした『譲子弾飛


8月には『画皮 あやかしの恋

と言った辺りが続けざまに公開になります。『譲子弾飛』は内容や出来栄え云々以前に、チョウ・ユンファが出てますから。發仔の映画ならそりゃ観に行くよ。それと『画皮』はキン・フーの映画に同じ題名のものがあるけれども内容は一緒なのかな。観たけど全然憶えていないから問題はないが。しかしどれも香港映画というには微妙な感じだけど。中国映画かまたは台湾映画?とはいえ、なじみの監督や俳優が前面に出るとなるとそこは香港映画の匂いを期待したくなるもの。一方で秋以降に連発されるらしい『竊聽風雲』『竊聽風雲2』『報應』『火龍』『奪命金』といった作品は、我らの見慣れた香港ノワールの雰囲気濃厚。どっちにも期待したい。