眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

ムカデ人間2 感想

於:シネリーブル梅田

脚本・監督は前作に引き続き、トム・シックス。2011年のオランダ/イギリス映画。

事前情報はほとんで入れずに観に行ったので、モノクロ映画と知って驚く。日本公開版だけが上映禁止をクリアするために取った策かと思ったけどこういう映画なのだった。デジタル加工したモノクロではあってもカラーとはまた違った味わいがあり、なかなか良い感じに仕上がっている。一種の変態ノワールとも言える風情があるのではないかと思う。

前作において、狂気の医師ディーター・ラーザーはああいうことになっているので、さてその続編はどうなっているのかと思うとなんと前作とはストーリー上は全く関係がない。『ムカデ人間』が好きでたまらない駐車場の警備員ローレンス・R・ハーヴェイ(あのローレンス・ハーヴェイとおんなじ綴り!)が次第に狂気を暴走させて12人の人間をムカデ化させようとする、という話。ほとんど彼の台詞はない。虚ろで怒りに満ちた目で相手を見つめ、歯ぎしりし、よだれを垂らして、小柄なからだにはちきれんばかりの出っ腹姿で、はげ頭でよれよれの白衣を着て悦に入る。そっけない銃の発砲、続けてバール(のようなもの)で獲物の頭をぶっ叩く、感情のまるでこもらない殺伐した描写などまだ序の口で、いざムカデ化手術が始まってからは、ああ〜こりゃ痛い!と想像される生理的嫌悪感を刺激をするシーンの中で、ひとり嬌声を上げて喜ぶローレンスの凄味はなかなか堂々たるもの。よくぞこんな俳優を見つけて来たものだ。この映画の凄さの大半はローレンスの存在そのものによるところがある。それくらいのインパクトの強さ。

映画の後半は阿鼻叫喚の地獄図のみしか描かれないが、これがカラーだったらさぞきつかったろう。全編モノクロの中で一か所だけ色がついているシーンがあるが、それがまた悪趣味で笑った。

前作のムカデ人間のひとりであるアシュリン・イェニーが本人役で登場するのも嬉しい。『エルム街の悪夢』の『リアル・ナイトメア』のようにメタ化していく展開が面白い。オチがいわゆるアレではあるが、後半の惨状描写の濃厚さ(の満足度の高さ)ゆえ、もうどうでもいいって感じ。また、これから始まるのかも、とも思えるし、表面的には普通に繕っている人間の心に巣食うおぞましい感情を描いたと思えばまたそれはそれで不気味さもあり。3作目にも期待したいところ。

終了後、男子大学生(かな)3人が、いやーひどかった、きつかった、と口々に言いながら劇場の外へ。そのうちの一人が、眼下の梅田スカイビルの広場で催されていた盆踊りを見降ろして、「やっぱりこっちにすればよかった」と言うと、別の一人が「いやどっちも似たようなもんやん」と答えて、3人で笑っているのが微笑ましかった。どちらもつながってぐるぐると。確かに同じかもしれません。