眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

「スイーツ!嗚呼、甘き青春よ」 3月4日(月)の日記

福岡発地域ドラマ『スイーツ!嗚呼、甘き青春よ』をみる。

NHKのドラマは結構シビアな内容のものも多くて、見続けるのが辛いときもあるが、この作品は単純でさわやかな青春ものになっていて愉しくみることが出来た…と書いた瞬間、いやそれだけではなかった、と橋本愛のドラマを思い出してちょっとどんよりとした気持ちに。

高校の製菓コースに通う桜庭ななみ橋本愛川畑光瑠の3人が、スイーツの甲子園を目指して頑張る、というのが主な物語。それぞれが家庭の事情を抱えながら、ひと夏の青春を駆け巡るのだが、職を失って酒浸りになった父親とまだ幼い兄弟たちを抱えて生活している橋本愛のパートが突出して不遇で辛い。3人で泊まり込んでスイーツ作りのアイディアを絞り出しているところに父親が帰宅し、パティシエなんか就職に全然有利じゃないものを選んで一体何だと言いがかりのようにケチをつける悲しい父に、声を荒げて邪魔しないでくれと頼む橋本愛の姿が悲し過ぎる。が、その姿をみているななみの目にはあわれみはなく、むしろ愛の強さにこそ心打たれている風なのがよろしかったな。ドラマ部分のシビアさは橋本愛のパートにほぼ集約されているが、ななみとおばあちゃん(もたいまさこ)の関係もきちんと描かれていて、両親よりも祖母とのかかわりの中で彼女は自分の人生の中の光を見つけようとする。その中でみせる桜庭ななみの表情は実に、これはもう、キラキラしている、と言って過言ではない、そんな生命力と人生への歓喜にあふれているように見えて、まだまだ広がる女優の可能性が輝いているようで、これは素直に美しい。

75分しかないので少々駆け足気味なのが惜しく(脚本は大森美香。本人も描き足りないと思っているんじゃないか)、脇のキャラクターがうまく生かされていないし、ドラマとしても食い足りない部分も多いが、その中でも奥田恵梨華の先生役というのが意外とはまっていて、これはなかなかよろしい感じで印象に残る。愉しい作品でした。