眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『相棒SERIES X-DAY』をみる


アポロシネマ8にて。

監督は橋本一。続けて5月には『探偵はBARにいる2』も公開。この調子で復活した『極道の妻たちNeo』でもぜひ監督してもらいたい。そのときの主演は尾野真千子で…と書きながらなんだか本当に実現しそうな気もしてきた。

脇のキャラクターを主役に立てたスピンオフ第2弾。今回は伊丹刑事こと川原和久が主演…なのは間違いないが、あくまで捜査一課の刑事としての活躍しかしないので、殺人事件の裏側にある巨大な陰謀については、結局触れないまま終わるため、主役としては中途半端な印象になっている。むしろサイバー犯罪対策課という立場ゆえにそれに接近して事実に触れてしまう、田中圭演じる岩月刑事の方が、暗澹たる思いにうなだれることになり、言わば伊丹が表、岩月が裏、双方あわせて主役になる、という感じ。ダブル主演とは判っていても、そこまできれいに役割分担しなくても、と思った。伊丹刑事はこれまでにも、上からの圧力で捜査が止まる経験をしているが、今回も刑事としての矜持を捻じ曲げる力との戦いを期待してしまったのでちょっと物足りない。が、特命係のからまない捜査一課、というのはなかなか新鮮で面白く、レギュラー陣もそれなりの活躍をし、テレビをみている人間にはそれなりに面白がれるとは思うものの、題材的に地味、それを映画らしくみせることのむずかしさも感じられてスケール感には乏しく、2時間スペシャルのもう少しお金のかかった版、のように思えてしまうのは惜しかった。

櫻井武晴の脚本は、シーズン11の最終回同様、現実を直視せず、なんとかなるだろうと高をくくっている日本人に対する、猛毒をまき散らす物語で押し切るところが凄い。ただ、複雑に絡んだ物語を進めることに気を取られたか、ドラマとしてのふくらみや面白さに欠けるところがあるのは否めなかろう。まあそのあたりは脚本だけのせいではないだろうけれど。

組対5課が暴力団事務所に突入する場面が派手な見せ場かな。こういう捕り物の場面を邦画で見ることは減ったなあ、とスクリーンを眺めながら思ったです。あと、クライマックスで走る伊丹刑事の勇姿!顎上がってるよ!かなりきつそうだったなあ。でもここは『フレンチ・コネクション2』を思い出して、個人的にはちょっと盛り上がった。国家的な陰謀の物語ではなく、一刑事の執念がカタルシスに結びつく刑事サスペンスの方が、伊丹刑事を主人公にするのなら向いていたのかもしれないなあ。