眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『ライジング・ドラゴン』をみる


TOHOシネマズなんばで。

昨日が電影金像奨の発表で、ジャッキー・チェンとヘ・ジュンがこの作品で、最佳動作設計を授賞。アクションの見せ場でいうと、冒頭での全身ローラーブレードチェイス、中盤の海賊船をめぐる攻防、終盤の悪役の秘密工場での戦い、クライマックス…という流れ。海賊船パートは、ジャッキーたちの他、フランス人の荒くれ者チーム、そして唐突に登場する海賊たち(ロー・ワイコンもいます!)、3つのチームの入り乱れるやりとり(アクションが、というわけではない)がおかしく、如何にも往年の香港映画の楽しさ。ジャッキーたちも一枚岩ではなくて、学者のヤオ・シントン、フランス人のローラ・ワイスベッカーはジャッキーたちの本当の目的は知らないし、国宝を盗んだことを恨む中国人と昔のことだからとするフランス人で対立しているし、海賊たちも中国人、日本人、タイ人…と色々。しかもみんな間抜けに描かれているのがいい。ここはコメディというよりもほとんどコントのようで、蜂に刺されて腫れあがった顔とか、セットまるだしの強引さとか、本気か!というくらいの懐かしき味わい。びっくりした。しかしこれはいまどきの若者の心をもしかしたら萎えさせるアナクロぶりなのかもしれないとも思うのだけれども、ごった煮のようなごちゃごちゃしたところが愉しくてたまらず、加えて秘密工場での戦いは本当に昔ながらのジャッキーアクションでうれしくなってしまうこと請け合いで、ジャッキーが戦う一方で、ジャン・ランシンとケイトリン・デシェルの女の戦いも展開するという、本当に今は2013年なのだろうかとクラクラするアクション映画っぷりが最高。

この作品は、ジャッキーがガムを口に放り込むところがとても懐かしかったりする『アジアの鷹』シリーズの3作目なのだが、それを念頭においてみると、シリーズらしい作りになっているなとも思った。あんまり必要のない外国人女性が主役チームの中にいて、世界をまたにかけて、クライマックスには空中を飛ぶ、という。宙を飛ぶ、というのは段階を経てどんどん恐ろしいものになっているのも凄い。話がどうでもよくなる感じも似ている。でも今回は、ジャッキー単独の冒険ではなくて、はっきりとチームを組んでいるのが新鮮でもある。でも正直、俳優はどうでもいい感じなのは、クォン・サンウが出ているのに全く彼のファン向けの見せ場などないところにはっきり出ている。自分以外は本当は誰が出ていたっていいんだろうなあ。中国と韓国が出資していて、それらの国におもねった内容になっていても、ジャッキーの映画はジャッキーが目立ってなんぼの世界なんだなあ、変らんなあ、としみじみとしましたな。でもそんな冷たい仕打ちをされた脇のキャラクターたちのドラマにきちんと決着をつけているところに、そうはいってもちゃんとフォローする憎さを感じさせる。あと、ワンカットだけ登場するスー・チーダニエル・ウーも嬉しかった。シリアスになりきらず、家族揃ってみることの出来る、大娯楽映画。のんびりとした気持ちでみると最高に愉しい。

ただ、ジャッキーが、一言も広東語を口にしないのは寂し過ぎるよな。