眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『パシフィック・リム』をみる

盆休みとはいえ月曜日の昼間がこんなに混雑しているとは…という状況のあべのアポロシネマにて。

予告をみた段階では、これでは燃えない、と想像。既知のイメージから一歩も出ていないと思われたから。しかし映画というのは映画館の大きなスクリーンでみたときにその力が如実に発揮されるもので、冒頭部分でのイエーガーとドック内の描写をみせられた途端、マニアの戯言めいた憤懣は雲散霧消。でかい!とにかくでかい!日本人は巨大ロボットを幼いころから見続け、イメージを蓄積しているので、実物のごときリアリティで表現されたときに、これを本当にリアルなものだ、と認識出来るのである。この驚異のスケール感にはとにかく圧倒された。マニア好みの描写に欠けるといった意見もあるが、むしろそういう視野狭窄的なことを考えなかったギレルモ・デルトロの選んだ方向性を支持したい。一般向きな映画を目指したのは正しい。デルトロがどう思っているかは別に、マニア受けが身上のような映画にならなくて本当に良かった。

暗い場面が多く、クライマックスの海底の場面も何をしているのか良く判らないといった意見も多いようだが、個人的にはまるでそんなことはなかった。暗いことでリアルさは増し、巨大な水しぶきは戦いの凄絶さを感じさせる。もっとひどいものを想像していたせいか、こんなにはっきり見えてるのにどうして…と思うほど(ちなみに2D吹き替え版での鑑賞)。ことに香港での陸上戦は凄まじく、CGで動いているのを忘れてしまうほどに、ブツとしての存在感が強烈、次第に着ぐるみじゃないのか?と疑いだす始末。すばらしかった。

ドラマは確かに書き割りのように単純な部分もあるが、それぞれの葛藤や決意を手際よくみせていくので、きちんと気持ちも乗っていく。ところがドラマとして面白いのが、本筋のパイロットたちではなくて、怪獣が好きでたまらぬ少々イカレ気味の学者二人や、怪獣の死体を回収して売りさばいているロン・パールマン率いる組織、といったあたりなのはちょっとポイントずれたかな、という印象ではある。

キスシーンがまったくないのも驚きだった。主人公二人は精神的に結びついているので、ラストシーンでですら、キスしない。肉体的な接触以上の関係ということなのだろうが、理屈としてはそうであっても、単純にキスシーンのないハリウッド映画なんてあまりないんじゃないの。こういう映画だからこそ、DVDやネットでみるんじゃなくて、是非とも映画館でみたい。こればっかりは100インチくらいのプロジェクターでは意味がないと断言する。